人の中で生き続けていく曲を、戸渡陽太 自問自答から見えた光
INTERVIEW

人の中で生き続けていく曲を、戸渡陽太 自問自答から見えた光


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年04月26日

読了時間:約11分

帰る場所はないけれど、どこかに帰りたい

戸渡陽太

——続いては「Homesick」ですが、故郷が恋しいという歌ではなく…。

 そうです。僕はまだホームシックになったことはなくて。最近、金子みすゞさん(大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した日本の童謡詩人)の詩で、自分のこの状況をうまく言い当てているなというものがあって。それは、原因がわかっている物事に対してはそれを与えれば満たされるけれど、自分の寂しさはどうしたら治るのかというものなんです。僕の場合もそれに近いホームシックだなと思っていて…。帰る場所はないけれど、どこかに帰りたいみたいな感じです。結局、人は人に帰るといいますか、同じ方向を向いている人に帰っていくと思います。それが家族になっていくのだろうなと。

——確かに人に帰還するというのもわかる気がします。人と接することによって、答えが見つかったりとか。ちなみに戸渡さんはミュージシャン仲間と音楽の話をすることはありますか。

 サッカーの話は好きなのでしますけど、お互いの活動の話はあまりしないかもしれないです。

——そういえば、Brian the Sunの森 良太さんとも仲が良いみたいで。

 はい。兄貴的な存在です。僕はお酒が大好きなんですけど、森くんもお酒が好きなこともあって、意気投合して盛り上がってしまって(笑)。

——その時も音楽の話はせずに、趣味的な話題を?

 森くんとは音楽の話もします。僕にもなぜだかわからないんですけど。

——もしかしたら森さんが戸渡さんの“ホーム”なのかもしれませんね。

 心の拠り所みたいな(笑)。

——さて、続いては「メランコリーな日々」ですが、どのような心境の中でこの楽曲を綴ったのでしょうか。

 昨年末に書いた曲で、今作の中では一番新しい曲です。なんだか上手く行かないなぁという日々の中で作曲してもアイデアが出てこずに、それでも日々は待ってくれるはずもなく朝日は昇ってくるわけで、それをポップに歌うと「どうなるんだろう?」というきっかけから生まれました。切なくて悲しい詞ほど、明るい曲調の方が僕は伝わると思っていて。

——曲調も面白いですよね。

 ジプシーでもないし、様々なジャンルの中間に位置するようなアレンジです。

——ワールドミュージックがお好きだとお聞きしたのですが、その要素も入ってきて?

 意識はしていないですけど、少なからず影響は受けてきているので入っていると思います。

——ちなみに楽曲を制作するときには、音楽を聴いたりしてインプット作業はしますか。

 自然とインプットして出てきたものに身を任せたいと思っているので、敢えて曲を作るときに音楽を聴くことはほとんどないです。音楽も日常から切り離せないものだと感じています。「音楽中心に生活が回るとどうなるんだろう?」というのは最近よく考えます。

——もし音楽が出来ない、聴けない状況になってしまったら戸渡さんはどうされると思いますか。

 ちょうど、色んなジャンルのクリエイターの方たちと集まった時に、そんな話を最近しました。みんな、自分が体のどの部分を失ったら辛いかという話をしまして…。皆さんは目とか話していましたけど、「僕はどうなんだろう、耳が聞こえなくなっても何か作るんだろうな」とか。僕はInstagramで写真詩集というのをやっているので、それをやるのかなとか。おそらく目が見えなくなったとしても音楽は続けていると思います。

——クリエイティブなことはやり続けるわけですね。

 失ったその時は一瞬、心が腐るかも知れないですけど。たぶん何かしらは作り続けるのではと思います。

——さて、続いては「Fall Out」ですが、この曲も「灰色のユートピア」に近い歌詞の世界観です。

 「灰色のユートピア」が外側を歌ったもので、この曲はもっとパーソナルな、自分の周りのしがらみ、不甲斐なさから離脱したいというところから生まれました。離脱を“Fall Out”と表現していて、その“Fall Out”した先に光というのがあるのではないかと。みんな、何かしらのしがらみを抱えてると思うんですよ。

——例えば楽曲制作にも制約をつけたり?

 僕の場合はあまり制約とかは設けません。アウトプットはいくつもあった方が良いと思っているので。

——今、一番しがらみを感じているところはどこでしょうか。

 最近はやっと風が吹いてきた感じはありますけど、昨年思うように動けなかったことです。昨年末から徐々に動いて行けるようになってきたので、今はしがらみが薄まってきていて嬉しいです。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事