ショパンがピアノ人生変えた、小林愛実 譜面に見る作曲家の想い
INTERVIEW

ショパンがピアノ人生変えた、小林愛実 譜面に見る作曲家の想い


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年04月13日

読了時間:約14分

何で私はピアノ弾いてるんだろう?

――最近大変だったことなどありましたか?

小林愛実

 逆に楽しかったことがありました。最近は他の楽器の方々と演奏する機会が多くあって、ピアノにはない表現方法がたくさんあって、それを間近で見ることが出来て刺激的でした。。

――ほかの楽器で興味があるものはありますか?

 チェロとか好きですね。低音が響いて綺麗。でも、結局はピアノが一番好きな楽器です。ピアノはいくつもの音が表現できるので、一人でオーケストラを操っている感じです。ここはどの楽器が演奏しているのかと考えて、ハーモニーを作っていかないといけません。

――ピアノが大好きなんですね。もし、この世からピアノが無くなったらどうしますか?

 普通に生きていくと思います(笑)。

――3歳からピアノを始めたとのことですが、その時の記憶ってありますか?

 ほとんどないです。でも、断片的にピアノを弾いてた記憶はあります。

――ご両親がピアノを習わせくれたのだと思うのですが、今こういう形になって凄いですよね。

 実は音楽一家と間違われるのですが、両親は音楽家でもなく習い事の一つとしてはじめたのです。

――そうなんですか? では、よくある習い事の一つとしてピアノを習わせていた?

 私が人見知りだったので、幼稚園行く前にコミュニケーションを取れるようになっていた方が良いと思ってバレエとか、スイミングとか習字とか…その習い事の中の1つにピアノがありました。なので、両親は私をプロにしようとしていた訳ではなかったのですが、だんだん先生が真剣になってくれて。そこからコンクールに出場するようになって、私も次第に真剣になっていきました。

――先生は才能に気づいていたんですね。ご自身での評価はどうでしたか。

 4歳の頃には上手に弾けていると思っていました(笑)。10歳くらいまではそんな自信がありました。小さい頃は何も考えずに、ただ楽しく弾いていたんだと思います。

――そして、訪れた挫折は『ショパン国際ピアノコンクール』で1位を獲れなかったこと?

 いえ、実際はその前の時期が辛かったのです。『ショパン国際ピアノコンクール』に出場する3年くらい前から音楽をやる意義を見いだせなくなっていました。「何で私はピアノ弾いてるんだろう?」と。

――それで出場する時に、先程お話し頂いたショパンの話に繋がるわけですね。

コンクールでは入賞を逃してしまいましたが、改めてピアノと向き合うきっかけとなった良い機会になりました。

――演奏前の儀式として、本番前に背中を叩いてもらって気合いを入れてもらっていますよね? あれは、いつ頃から始めたのでしょうか。

 あれは10歳の頃からやっています。

――何かきっかけみたいなことが?

 はっきりとは覚えていないのですが誰かに叩かれて、その時のピアノが上手に弾けたからだと思います。それからずっとやってもらっています。叩くのは誰でもいいんですけど(笑)。

――ジンクスですね。さて、今作で聴いてくださる皆さんに感じ取ってもらいたい部分などありますか?

 自分の中では『ショパン国際ピアノコンクール』が終わって、私のピアノ人生の第2章が始まった感じなので、音楽との向き合い方も全然違うし、音楽の作り方の違い、新しい私を見てもらえたら嬉しいです。それから、リストとショパンはピアニストでもあった作曲家。同じ時代を生きた代表的な作曲家の音楽を聴いて欲しいです。リストの「ペトラルカのソネット」というのは、あまり有名ではないのですが、すごく良い曲なのでこれを機会に知って頂きたいです。

――これから挑戦したい新しいことなどはありますか?

 先日ベートーヴェンのトリプル・コンチェルトがあり、ピアノとヴァイオリン、チェロのソリスト3人とオーケストラと一緒に弾く機会がありました。室内楽をやる機会があってもコンサートでやる機会は最近なかったんです。久しぶりに室内楽コンサートやって、一緒に音楽を作るのが楽しくて。これからもっと室内楽をやっていきたいなと思っています。

(おわり)

◇小林愛実 プロフィール

 1995年9月23日山口県宇部市生まれ。現在、東京都/フィラデルフィア在住。8歳より二宮裕子氏に師事し、2011年桐朋学園大学付属高校音楽科に全額奨学金特待生として入学。2013年よりフィラデルフィア・カーティス音楽院に留学。現在、マンチェ・リュウ教授に師事し研鑽を積んでいる。

 3歳からピアノを始め7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たす。2005年(9歳)以降、ニューヨーク・カーネギーホールに4度出演、パリ、モスクワ、ポーランド、ブラジル等に招かれ、スピヴァコフ指揮モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、ジャッド指揮ブラジル響等と共演。ポーランドには、「ショパンとヨーロッパ」国際音楽祭ほか、協奏曲のソリストとして度々招かれている。国内では、N響、読売日響、東京フィル、大阪フィル、兵庫芸術文化センター管弦楽団、日本フィル等と共演し、サントリーホールをはじめ各地でもリサイタルを行い高い評価を得る。

 2010年(14歳)『デビュー!』でCDメジャーデビュー、翌年セカンドアルバム『熱情』をリリース(EMI CLASSICS)。また、同年ショパン生誕200年記念に際して、ポーランド政府より「ショパン・パスポート」を授与された。2015年(20歳)10月「第17回ショパン国際ピアノ・コンクール」に出場、ファイナリスト。2017年7月にはモスクワ・フィルの日本ツアーでソリストとして迎えられ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を共演した。

 幼少期より多くのメディアから注目を集め、フランスのLCIテレビのドキュメンタリー、日本テレビ「深夜の音楽会」、テレビ朝日「題名のない音楽会」、NHK-BS「みんなのショパン」、NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」など多数のテレビやラジオ番組にも出演。2015年にはTBS「情熱大陸」にも登場し話題を呼んだ。今、世界的な活躍が期待できる日本の若手ピアニストとして最も注目を集めている。

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