それぞれの解釈、それが音楽の素晴らしさ
――アルバム全体を通して「恋人」を描いていて、曲の流れが「出会って」「別れて」「運命を知る」という作りになっているような印象を受けました。それはもともとそういう楽曲だったのか、それとも、このアルバムに収めるために日本語詞でその世界感に寄せたのか?
意識して曲順をこのようにしたわけではないんですけど、私達も実は曲順を決めて聴き直したときに、正に「恋人の物語みたいになっているね」と感じたんです。話された通りです。曲順を決めるときは、曲を並べてみて聴き返して、綺麗な流れになるか、相性が良いかということを確認しながら進めていくんです。作ってみたらそういう風になっていたと。
――アメリカ滞在時に作られていた曲「Heartburn」などは、シェネルさんのサウンドの原点のような気がしました。デビュー「ラブ・ウィズ・DJ」とリンクすると言いますか。
洋楽アルバムとしてみなさんにはあれが一番印象に残っているでしょうから、おそらく何となくサウンドが近いと感じたと思われるんですけど、たぶん、「ラブ・ウィズ・DJ」に比べて今回の方がより最先端のサウンドだし、あれは明るいダンスホールのポップソングだったけど、今回はサウンドが凝っていたり尖っていたり、内容も濃いんです。そういった意味では「ラブ・ウィズ・DJ」よりは進化していると自分のなかでは思います。
――確かにリズムやEDM、ギターのサウンドがクールで、聴いていてすごくドキドキしますね。かっこいい。
イェイ! ありがとう! ライブでパフォーマンスすると凄く盛り上がるんですよ。
――「ハイブリットな作品」と例えられましたが、確かに収録曲は日本と世界の音楽の違いがはっきり出ていて面白いですね。例えば、最近日本でよく使われている、ストリングス・アレンジなど。「Happiness」のときもストリングスを使われていました。
いいブレンドだと思うんです。
――サウンド面における対比と、歌詞の世界観“恋人の物語”が上手く絡み合って、それがまた面白い。
同じ「愛」について歌っているものでも、ただ「I love you」「好きでしょうがない」「会いたい会いたい」という理想的な夢物語というようなものではなく、具体的に経験をしたことがあって、より共感しやすいものを歌っているものが多いと思います。
自分が愛する人がまるで親友のように凄く大好きで、あなたと一緒になれないなら私は二度と恋に落ちないというような思いとか、「Love You Like Me」だと、「私ほどあなたのことを上手く愛せる人はいないわ」という、自信たっぷりに歌うような表情もあるんです。
「Love Sick」「Outta Love feat.MINMI」には遊び心もたっぷり。「あなたのことは好きだけど、今日は恋愛のことは忘れて思いっきりパーティをするのよ」とか。そういったバラエティにも富んでいるし、物語や気持ちということに対しての色々な表情を見せているということが、自分としてもとてもやりがいがあって手応えがありました。
――これまでは今作をストーリーで捉えていたのですが、今の話を聞いたらそれぞれのパターンとして、曲ごとに「一話完結」もできますね?
そう! そういう感想をもってくれて嬉しいです。このアルバムを聴いた感想は、人それぞれが経験してきたことによって違ってくると思うんです。「自分にとってはこういう作品だ」と受け止めて、人によってその印象が変わってくるんです。
音楽ってそこが素晴らしいところで、その人が歩んできた人生によって受け止め方が違うし、それぞれが楽しめるというところがあるんですよね。