Do As Infinityの本質をリニューアル
――「Iron Hornet」のタイトルはパンチがあります。直訳すると“鉄のスズメバチ”ですよね。タイトルも意味深で全て英詞です。この作品は「Alive」の対となる楽曲とのことですが、どういった内容なのでしょうか?
大渡 亮 「Alive」の世界観の続編的な感じになっています。内容は「人々の住むエリアはもうない」という。
――<In Our dystopia>や<The euthanasia>という言葉も入っていて、穏やかではない世界感なのかなと思いました。「Iron Hornet」の“スズメバチ”は何かの比喩なのでしょうか?
伴 都美子 「Iron Hornet」はその小説の中に出て来ます。比喩ではないですね。
――今までこういったダークなサウンドはありましたか?
伴 都美子 ダークサイドは結構ありますね。
大渡 亮 意外と自分達の主軸はこういったサウンドの感じが多くて、1stアルバムからそういう世界観は打ち出しています。
――確かに雰囲気的には初期の頃にも通ずるものがありますね。しかし、同じダークサイドでもアレンジが変わると聴こえ方がだいぶ違いますね。
大渡 亮 Do As Infinityの本質をリニューアルしたという感じにも考えられます。
――全英詞というのは、感情の込め方も変わってきますか?
伴 都美子 そうですね。英詞の良いところはリズム感やスピード感が出ることです。普段、流暢に喋れる方ではないので大変な部分もありますが、全英詞は1stの頃からも要所でやってきていますし、面白いし、こういう曲は続けたいと思います。日本に限らず、色んな人に聴いて頂けるきっかけになると思います。
――初の南米ツアーもありますしね。
大渡 亮 初ですね。すいぶんお誘いは頂いていたのですが、ようやく実現できることになりました。しかも4カ国という、盆と暮れと正月が一気にくる感じですよ(笑)。
――メキシコ、アルゼンチン、チリ、ブラジルと。ブラジルとチリはアニメフェス『Anime Friends 2017』に出演されます。
大渡 亮 ブラジルからはよくお誘いがありました。「来てください」「行きたいけど行けない」という押し問答が続いていて。やはり向こうの文化への突破口としてはアニメですね。予想以上に日本で流通しているアニメは向こうで根付いているみたいで。南米に関しては僕らが担当したアニメ『犬夜叉』が大人気らしくて。「『犬夜叉』のあの曲を歌っている奴らが何で来ないんだ」というくらいのね(笑)。
――海外で演奏するにあたってのモチベーションの違いはありますか?
大渡 亮 ライブ自体にはモチベーションの違いはないです。単に遠くに行って演奏できるのはエキサイティングだな、と思います。Do As Infinityに属していることにより、行ったことのない国へ連れて行ってもらえる感覚といいますか。4カ国は全て初めて行く国なので、今から楽しみでしょうがないですね。
――現地でライブ以外の楽しみはありますか?
大渡 亮 食事ですかね。あとは景色や向こうの文化をリアルに触れられるということですね。
――伴さんは南米に行ってやってみたいことは?
伴 都美子 やってみたいことは色々ありますが、まずは治安が心配ですね。前半3カ国はとにかく安全第一で、ライブが滞りなくやれることを願っています。そして生きて帰ってこられることを目標に。
――治安は心配ですね。ライブ中に事件というのも最近起こりますから。
大渡 亮 この前のアリアナ・グランデのライブでね…。でも、それを恐れて行かないという訳にもいかないですから。僕はそれよりも興奮の方が先です。行きたいと思っていたら、急にそういうお話を頂いて、やはり強く願っていたら叶うとこの歳になっても感じます。逆に強く願わないと叶わないと思います。
――そういった願いは言葉にも出した方が良いでしょうか?
大渡 亮 3年くらい前に「Do As Infinityこのあと何しようか?」と会議で話していたことがありまして。その時に僕は「海外に行きたい」と強く言いました。そうしたら今回こういう形になっていますから。言葉にしないとそれが伝達されないと思います。今回のことで僕は本当に痛感しています。
――9月には18周年記念のファンクラブ限定のライブが赤坂BLITZで開催されます。ファンクラブのライブは通常のライブとはやはり趣は違いますか?
大渡 亮 強いて言えば、選曲をファンクラブの方が満足できるところに設けるということです。B面の楽曲とかですね。ファンクラブのイベントなどで、ファンの方と会うときは常に聞くようにしています。「どうなの? 実際何が聴きたいの?」と。
――直接リサーチされるのですね。
大渡 亮 もはや、みんなの好みが分からなくなってきてしまいまして(笑)。僕は常に舞台芸術的なセオリーで物事を考えがちなので、選曲など、いわゆる普遍的なショーの成り立ちのようなものが体に入っているつもりです。コード感だったりテンポだったり。
――全体の流れですね。
大渡 亮 そうです。でも「何であの曲はやらないの」という質問を受けて「確かにリハではやるんだけど、結局次点になっちゃうんだよね」みたいな。そうか、それを聴きたかったのか、とね。だからマニアックな場所を設けて次はやりたいかなと思っています。
――レア曲は楽しみですね。それでは最後に今作のシングルについてメッセージをお願いします。
大渡 亮 僕達のことを知らない世代の方に、是非この新譜を手にして頂きたいと思います。名前は知っていたけど、聴いたことはないという世代の方に、もしくは新人のような感じで聴いて頂けたら、それだけで十分です。
伴 都美子 久しぶりのシングルで、澤野さんとタッグを組んで面白いことをやっています。仕上がりにも満足しているので是非聴いて下さい。
(取材=村上順一/撮影=冨田味我)