マスタリングはトリートメント
――今作も4月に他界されたトム コインさんにマスタリングをしてもらったようですね。TETSUYAさんなりのマスタリングとは、どのようなものなのかをお聞きしたいのですが。
マスタリングというのは、一般の方には分かりにくいですよね。何をしているのか、マスタリングでどう変わるのかと。マスタリングとは音の最終的な仕上げの部分で、髪の毛で言ったら、トリートメント的な感じの作業です。それで仕上がりが全然違ってきます。プロの耳からすると全然違うのですが、一般の方の耳からすると分からないかなと思う部分もあります。
――リマスタリングというのをよく耳にするのですが、マスタリング自体の説明が一般的にはあまりないので、分かり難いですよね。トリートメントというのはすごくわかりやすいです。TETSUYAさんとトム コインさんとのお付き合いは長かったのでしょうか?
僕のソロの曲は全曲トムにマスタリングしてもらっていました。元々はL'Arc~en~Cielのアルバムでトムにお願いして、その時の印象がすごく良かったので、そこから僕はずっとトムですね。
――ニューヨークのスタジオでのエピソードはありますか?
「お前は日本のBON JOVI(米バンド)だろ?」と言われて(笑)。どういう意味かな、と思いながら。日本と向こうではまたBON JOVIのイメージは違うと思いますが、おそらく「いい曲を書く」ということを言ってくれたのだと思います。
――確かにBON JOVIは良質なメロディが多いですよね。TETSUYAさんと繋がる部分が確かにあります。トム コインさんのマスタリング作業を間近で見て感じたことはありますか?
「気さくでやさしいパパ」という感じの方でした。L'Arc~en~Cielの「Don't be Afraid」もトムにお願いしたのですが、その時に「TETSUYAとはもう20年来の付き合いになるね」とメッセージをもらいました。そんな風にメッセージをもらうことは今までなくて。その後に癌で亡くなってしまいまして。2012年くらいから本人は“終活”をしていたのではないかな、と思います。だからもう最後になるかもと思い、メッセージをくれたのかなと思いました。訃報を聞いたときはもうショックでした。
――TETSUYAさんにとって重要な作品になりましたね。
曲と声がディナーショー向き
――MV撮影の場所はお台場のヴィーナスフォートですよね。この場所を選んだのはなぜでしょうか?
誰もいない空間で撮りたかった、というのがまずありました。閉店から開店までの間を貸し切って撮影しました。最初は僕とマネキンというアイディアもあったのですが、それを猫に変えて。閉店後のショッピングモールがいいなとイメージがあって、それなら絵的にヴィーナスフォートが合うのではないかと。
――撮影でのハプニングもなく無事に?
ハプニングはないですね。MVの撮影で今まで25年間やってきた中でも特にないです。
――クリスマスにはディナーショーを開催されていますね。これはどこから出てきたアイディアだったのでしょうか?
何度かアコースティックライヴをやっているんですけど、それが評判が良くて。「曲と声がディナーショー向きだね」と周りの方たちから言って頂けて、その流れで自然にやっている感じです。
――TETSUYAさんは他の方のディナーショーを観られたことはありますか?
それがないんです。「ディナーショーってこんな感じかな?」というイメージしかなくて…。
――ご自身でディナーショーをやってみて、いかがでしたか?
グランドプリンス新高輪の飛天の間で行ったのですが、格式と歴史のある所ですよね。去年で言えば郷ひろみさんや松田聖子さんなど、凄い方々の並びに僕が入っているので、そういう所で出来ること自体が光栄です。
――TETSUYAさんにとってアコースティックというのは、バンドとはどういった意識の違いでやられていますか?
具体的に言うと、オリジナルよりもキーを下げています。肩の力を入れずに歌うのが、僕の中でのアコースティックという感じです。そこが大きくバンドとは違うところです。
――8月25日と26日に『TETSUYA 15tn ANNIVERSARY LIVE』がありますが、どういったステージになりそうでしょうか?
アニバーサリーライヴなので、この16年分の集大成です。セットリストは2日間で変えていくつもりです。
(取材=村上順一、撮影=冨田味我)