今後の糧になる作品、ドラマストア 最高のBGMとなる六篇の物語
INTERVIEW

今後の糧になる作品、ドラマストア 最高のBGMとなる六篇の物語


記者:長澤智典

撮影:

掲載:17年05月14日

読了時間:約12分

主人公をモブキャラにしたかった

長谷川海

——「Extra.」は疾走感満載なギターロックナンバーへ仕上がりました。

長谷川海 今の子たちはめっちゃ好きな曲調でしょうね。ただ、この曲が完成するまでにはいろんな苦労があったというか、構想が二転三転したうえで、今の、サビメロがキャッチーなギターロックナンバーに仕上がりました。

松本和也 このアルバムの中、一番最後に完成したのがこの曲でした。先に出来上がった5曲を並べ、「このアルバムに足りないもう一つのピース(楽曲)は何だろう!?」という話をしていく中、出てきたのが「ライブでお客さんが盛り上がれる明るい楽曲にしよう」ということでした。ただ、今はポップな音楽性を軸に作っているように、メンバーみんなロック色の強い楽曲を作るのを苦手としていたから、最初は「やめようか」という話にもなっていたのですが、やはり、こういう勢いのある楽曲が欲しかったことから入れました。

長谷川海 歌詞はとにかくリアルに。しかも、主人公をモブキャラ(個々の名前のない群衆)にしたかったんですよ。とくにCメロに出てくる<ロンリーお兄さんロンリーお姉さん>は出来るだけ抽象的に書こうと思って出てきた表現。この歌詞に関しては、だいぶ距離感を置いた超第三者的な目線で書きました。

——夢見ながらも、結局実現できない登場人物のような人たちって、自分も含め世の中にはたくさんいると思います。

長谷川海 こういう人って絶対にいますよね。自分は特別な…エクストラな存在だと思ってるけど、実際にはエキストラ側でしかない。僕自身、「そうなっちゃいけないぞ」と気持ちを戒めながらこの歌詞を書きました。

——最後の「バースデー」には、ここからまた生まれ変わろうという想いを記しています。

長谷川海 朝井リョウ先生の「もういちど生まれる」という短編集があるんです。この作品は、いろんな物語を詰め込みながらも、最後に話が一つにまとまっていくんですね。このミニアルバムも、5曲目まで、1曲ごとに主人公がしっかりと出てくる、いろんな物語が描かれてゆく。その5篇の物語を踏まえたうえで、「じゃあ、自分はどう生きようか」と、主観的な視点で書きました。

 言われたように、「バースデー」には「もういちど生まれ変わる」という意味も込めています。そして、ここからまた新しい物語を描き出そう。その想いから『白紙台本』というタイトルも生まれました。

どのような物語を描いてゆくのか

ドラマストア

——完成したミニアルバム『白紙台本』について、みなさんどんな手応えを覚えていますか!?

松岡大暉 ギターが抜けたことでロック色の強い要素が薄れたからこそ、こういうポップで強い作品が生まれたなというのと。これからドラマストアはこういう路線で進みたいという意志を示せば、演奏面でもキーボードを入れた効果も見えたように、今後のドラマストアの糧になる作品になったと思います。

松本和也 鍵盤を取り入れたこともそう。自分らの中でもいろんなアプローチを示せれば、新しい発見もいろいろあったように、バンドにとっても新鮮な作品に仕上がったなと思います。個人的には、「ポップに寄り添った作品を作れたなぁ」という印象があるんですけど。同時に、ドラマストアは前へ進もうとしている挑戦の意欲を見せた1枚にもなりました。

長谷川海 間違いなく、新たな編成で良いスタートを切れた作品になりました。

——この作品をひっさげた全国ツアーも5月14日からスタートします。

長谷川海 総じて実りのあるツアーにしながら、ひと回りもふた回りも大きくなって帰ってきたいなと思っています。

松本和也 行ったことのない場所も含まれているように挑戦としての面もあれば、バンドとしても鍛えられそうな感覚があるように、不安と楽しみの両面があるんですけど。今は、ほんまバンドとしてのチームワークがしっかりしてるんで、今からツアーをまわるのが楽しみでしょうがないですね。

松岡大暉 新体制になってのアプローチの仕方を固めてくという目的を持ったツアーでもあるように、ライブを観た方々がどんな反応を示してくれるのか、そこは僕も正直不安と楽しさの両面があることですけど。何より、このツアーがバンドを大きく成長させてゆくうえでの大切なプロセスになっていくのは間違いないと思います。

——あとは、この作品に触れた人たちが、自分の心の白紙の台本にどんな物語を描き出していくかですよね。

長谷川海 そうですね。ライブを通し、各地にドラマを描いてゆくのはもちろん。この『白紙台本』へ触れた人たちが、どんな風に自分の心に人物をキャスティングし物語を描いてゆくのか。その感想も楽しみです。

(取材=長澤智典)

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