限りある時の中でいかに生きるか、奥華子 アルバムに込めた真意
INTERVIEW

限りある時の中でいかに生きるか、奥華子 アルバムに込めた真意


記者:長澤智典

撮影:

掲載:17年05月16日

読了時間:約16分

日頃から大切にしていけるものは沢山ある

奥華子

奥華子

――華子さんの楽曲の場合、いろんな歌を自分の心情や経験と置き換え、そこで感じた想いに共鳴する人たちも多いですよね。個人的には「遥か遠くに」に綴られた想いは、日々を生きてく中で、同じような意識を持っているせいか、とても深く共鳴出来たし、仲間意識まで感じました。

 私のファンの方って学生はもちろん、私よりも上の方々も多くて世代が幅広いんですね。だから、それぞれの曲によって受け止められ方も変わっていくことが多いんです。「遥か遠くに」で言うなら、今はまだ学生のような若い子たちの場合、この歌を聴いて「えっ、どういうこと?」となるかも知れない。だけど、それでもいいなと私は思っていて。万人に共感してもらうのも大事だけど、「この歳だからこそわかる気持ち」という歌があってもいいなと私は思っています。

 日々を当たり前に生きていると、日常の中にある素晴らしさって忘れがち。だけど、その大切さに気付けたら、もっともっと日頃から大切にしていけることって、たくさんあるんです。

――ここからは具体的に幾つか楽曲を題材に、その歌に込めた想いを紐解きたいなと思います。先にも軽く触れましたが、改めて「プロポーズ」が生まれた背景を教えてください。

 これは『MAST』のTVCM用に作った歌で、「幸せの入口に」というCMのキャッチフレーズがあったことから、先に<君を幸せにしたい>という言葉とメロディが浮かび、それを基に「ストレートなラブソングを作ろう」ということで生まれました。

――「365日の花束」では、恋人を失くしてしまった後で後悔する気持ちを歌にしています。

 誕生日でもなく記念日でもなく、何でもない日々にあなたがいることがとても大切なことだった。それに気付けなかった後悔を歌にしています。その気持ちを、この歌では「毎日花束を持っていたあなたに私は気付けなかった」と記しました。

 「365日の花束」は、それに気付けなかったことでの後悔を歌った失恋ソング。「失って気付くその人の大切さ」をテーマに書きました。

――女性から別れてゆく様を描いている、「彼女」はどうですか。

 この歌は、女性が男性を振る設定にしています。ただし、相手のことを嫌いになったというよりも、相手への気持ち(愛情)がどんどん消えていく様子を記しています。<こんな風に消えてくんだね>と書いたように、この歌で彼女は<あなたの好きな私にはもうなれない>というように「あなたの彼女という存在にはもう戻れない」と伝えています。それは相手を振ったというよりも、いつしかそういう気持ちに気付いてしまったからこそ、もう別れるしかないと結論付けていくという想い。これも、後で失うことへ気付くという歌です。

――「失ってから気付く」というテーマは、アルバムへ収録したいろんな曲たちに込められているように感じます。

 そうしています。しかもそのテーマやメッセージは、失恋ソングだけに限らず、幸せな歌にも詰め込んでいます。人生は無限なんかじゃない、限りある時間の中でいかに生きるかが大切なこと。このアルバムでは、時の流れに自分の人生における喜怒哀楽の感情が深く関係してくることも歌にしています。だからこそ、タイトルも『遥か遠くに見えていた今日』が相応しいなと思いました。

――「スタンプラリー」は、スマホ依存症の歌じゃないですか。事実、自分も含め、今や世の中の人たちの大半はスマホ(ケータイ)がないとソワソワしてしまいます。やはり、そういう世の中へ警鐘を鳴らしたかったのでしょうか?

 私自身もスマホに生活を冒されているように、自分への戒めで歌にしました。

奥華子

奥華子

――そうだったんですか?

 はい。私自身が、言葉やメッセージ文、一つを作る上でも、「漢字を間違えないように」「この文章で良いのか例文を参考に」とスマホで調べてしまう性格なんです。だけど、みんながそういうことをやっていたら、みんなが同じような答えを出してしまうことにもなる。

 「それって、世の中的にどうなっちゃうんだろう」という不安にも繋がっていくじゃないですか。歌詞に<斜め45度になって>と書いてるように、電車のホーム上に並んでる人たちがみんな首を斜め45度に傾けてスマホを見ている姿を見ると、私は「怖っ」と思ってしまう。だけど、その中の一人として、やっぱし自分もいるんですよね。

 世の中ってもっともっと自由なはずなのに、いつしかみんな狭い世界に閉じこもっている気がして。そこから「もっとオリジナルな自分らしさを出そう」「オリジナルのスタンプを作ろう」と「スタンプラリー」を通して、私も含めいろんな人たちへメッセージを送っているわけなんです。

――今はSNS社会じゃないですか。アーティストの方々もSNSを通して情報や意志を発していますが、そのことについてはどうでしょうか?

 今のところ、私にとっては自分を伝える良い手段として使っています。ただ、書いた言葉のニュアンスで、その言葉を冷たく感じられたりもするじゃないですか。そこは気をつけています。それと、間違って送信してしまわないことも気をつけています。

 私の場合、書いている途中で送ってしまい、一度削除した上で改めて送り返してということもあるので、そこは気をつけています。それと、プライベートで撮っている猫の写真を間違えてアップしてしまわないようにも気をつけています(笑)。今は、ボタンを押したらそれでおしまいになってしまうこともある時代ですからね。

――アルバム『遥か遠くに見えていた今日』の発売後間もなく、12月まで続く弾き語りツアー『奥華子コンサートツアー2017 弾き語り~遥か遠くに見えていた今日~』がスタートします。やはり、弾き語りこそ華子さんのライブの真骨頂と言いますか、言葉や想いがとてもリアルに響いてくる、そこを楽しみにもしています。

 私自身、音楽を聴くとき一番に歌詞へ耳を傾けています。中でも弾き語りは、歌詞も、その言葉に詰め込んだ想いも一番伝わってくる。私の歌を届けるうえで弾き語りこそベストだなと思い、今回も弾き語りのツアーにしました。ぜひ、みなさんも私の歌声にじっくり耳を傾けてください。

(取材=長澤智典、撮影=冨田味我)

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奥華子
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