人は終わりがあるからこそ美しい
――自分と誰かを比べて、その違いの間で苦しんでる曲が、たくさんあると思いました。その中で、一番新しく作ったという「ナンセンス」は、メンバー全員の声も入っていて。ライブで盛り上がりそうですね。
楽曲を全部並べた時、すごく重たく感じて。それで、ライブで無条件に楽しめる曲を入れようと思って、最後に作りました。「一人で寂しいし辛いかもしれないけど、私たちと一緒に歌って叫んでいれば大丈夫だよ!」と、言ってあげられる曲になっています。
最終的には、この曲でみんなのことが守れるようになれたら良いなって。みんなも気持ちのままに、叫べる曲になれば良いなと思って書きました。
――「H.O.L」は、“ヘイト・オア・ラブ”の略。スピード感のある楽曲で、ちょっとひねくれた恋愛観の曲になっていて。
高1〜高2に書いた曲です。私は、メロディを詰め込むのが好きで、息継ぎ出来ないくらいがすごい好きなんです。それで、すごく早口の曲になっていますね。
ちょっとひねくれた恋愛観ですけど、そこが自分っぽいと思って。でも、世の中に素直に恋愛をしてる人って、どれくらいいるんでしょうね(笑)?
絶対にみんな、そんな映画やマンガみたいな恋愛をしているわけないと思う。そういうのには憧れるけど、実質的には、もっと打算的なものもあると思うし。環境に左右される場合もあるだろうし。キラキラとした恋愛は、きっと一時のことだと思うので。
――ノイジーなサウンドとトリッキーなリズムが秀逸な「カタリナ」は、どうしてこういうタイトルに?
メロディと一緒に出てきた言葉なんですけど、語感がすごく良かったので。
ずっと使っている白いギターがあって、その時は、めっちゃギターが上手く弾けて。良い感じで出てきたコード進行に合わせて歌ったら、自然とメロディと言葉が、スルスルと出て来たんです。ギターが作らせてくれた曲みたいな感じです。
サビもAメロも全部メロディが一緒で、同じメロディを繰り返している曲です。歌詞も何を書こうとか決めず、その時に見たり感じたりしたことを、そのまま書いている感じ。でもクセになるって言うか。中毒性がハンパない曲だと思います。
――ミディアムバラード調のナンバーで「チョコレートコスモス」は、花をモチーフにしていて。
チョコレートコスモスには、「永遠の恋」と「恋の終わり」という真逆の2つの花言葉があって、それがすごく切ないなと思って書きました。
もともと、高1くらいの時に、何かの本に出てきて知った花なんですけど、チョコレートだからバレンタインのイメージで、2月の花だと思うじゃないですか? でも10月の花なんですよ。
――花を例えに使った曲は、他にもけっこうありますよね。
そうですね。「H.O.L」も、自分の心を花に例えてます。自分の恋愛の旬=蕾から花が咲いて枯れるまでの間に、摘み取らないと意味が無いみたいな。「カゲロウ」も、胸の奥に花を咲かせています。でもこれは、トラウマの象徴としてで。どんなに刈り取っても根っこが残ってて、何度でも芽を出すというイメージです。
――花のどういうところが好きなんですか?
咲いて綺麗なのもあるけど、散るとか枯れるとか、そういう儚さがあるところが好きです。綺麗なものには絶対に終わりがあって、終わりがあるからこそ綺麗だと思うんです。だから造花って、どんなによく出来ていても、本物の花のような魅力を感じないです。終わりがあるものの美しさが好きで、人もそうだから、きっと美しいんだと思います。
いろんなものにピリオドを打ちながら、前に進んでいきたい
――ダンスロック調の「エゴサーチ症候群」という曲もあって。これは、すごく10代っぽい感覚ですね。
この曲は、高校の時の友だちが、よくエゴサーチしてて。自分の元彼の今カノまで追いかけて、それってヤバイなって思って書いたんです。でも今の子は、みんなそのくらいのことは、普通にやってて。男の子も、元カノは今誰々と付き合ってるとか、そういうところまで、普通に把握し合っている時代です。友だちと友だちがあそこで繋がっていたとか、SNSで全部把握出来てしまう。それがおかしいわけじゃなくて、それがみんなの日常なんです。
自分のことを思ってくれていた人に、別れた後でも自分のことを思っていてほしいんです。自分には新しい彼がいるけど、元彼には、今も思っててもらいたいというのは、究極のエゴだと思うんです。自分はどれだけ幸せでも、誰々が幸せなのは許せないという、ひねくれた気持ちがエゴサに繋がる。
それに、知らないと不安だという気持ちの裏返しでもあると思う。知る術があるから、知りたい。術がないなら必要ないけど、知ることが出来るんなら知りたい。そういう心理です。それはSNSが身近にある世代の普通の感覚で、それを普通だと思う私たちだけの感覚だと思います。
――逆に「それを恋と呼ぶのなら」という、キラキラとしたピュア系の恋愛ソングもあって。
こういう曲は、自分で作っておいて何ですけど、歌ってゾワゾワします。好きな人へのラブレターを、みんなに回し読みされてる気分です。これまでは、絶対に曲の中で「好き」って言葉を使わなかったんです。それが、「カゲロウ」のカップリング「満月の夜に」で、初めて「好き」と使って。その時すごくゾワゾワしたけど、今回のほうがスーパーゾワゾワします(笑)。曲自体は、高3の時に書いたもので。自分にはこういう曲が書けなかったので、チャレンジする気持ちで書きました。
でも、すごく等身大だと思う。2人でいる時は自分らしくいれるのは、これを恋と呼ぶのかな? どうなのかな? でも嫌いじゃないし、友だちのままじゃ嫌だし。でも好きとは言えなくて。それで夜に電話して、頑張って告白して。「この気持ちを、馬鹿にしないでね」って。この流れが、すごく青春だと思う。自分は中学からバンドをやってるので、私が出来なかった青春をこの曲に託しました。私の中で、理想のまま過ぎ去った青春です。これを聴いて、キュンキュンして恋をしてほしいです。
――Ryokoさんの書く歌詞について、メンバーは何と?
曲については話すけど、歌詞についてはあまり話さないです。「Ryokoは闇が深すぎて分からない」とか、「考え方がババアだから、分からない」と言われます。精神年齢がアラサーとかアラフォーとか言われるので(笑)。
――でも20代になったら、歌詞のテイストも変わっていくのでしょうか?
どうでしょう? 自分にも分からないです。でも、いろんなものにピリオドを打ちながら、前に進んでいきたいと思っています。