誰かの人生の1ページに、naNami アニソンカバーで見えた未来
INTERVIEW

誰かの人生の1ページに、naNami アニソンカバーで見えた未来


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年05月09日

読了時間:約16分

今回は180度歌い方を変えた

naNami

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――今作収録の10曲の中で特に思い入れのある楽曲は?

 「secret base 〜君がくれたもの〜」は、唯一リアルタイムのアニメ放映で観た『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の曲なので、凄く思い入れがあります。このアニメを知らない方にとっては、「ドラマ『キッズ・ウォー』の曲でしょ?」というイメージがあると思うんですけど、私には両方の作品からの思い入れがあるんです。絶対にこれは収録したいという思いがありました。

――アルバムの曲順番は難しそうですね。

 そうなんです。全てが名曲なので、どれをどの位置にしても成り立ってくれるんです。始まりは「はじめてのチュウ」、最後の曲は「SAYONARA」という事は決まっていました。

――タイトル名を曲の位置にかけたのですね。『銀河鉄道999』からの選曲は意外でした。名曲ではありますが、「SAYONARA」を選曲する人は少ないのではと。

 「SAYONARA」は劇場版の映画の曲なので分からない方もいるかもしれないんですけど、私が初めて聴いた時に、単純に凄く良い曲だなと思って「歌いたい」と純粋に思ったんです。洋楽が大好きなので、1曲は英詞の歌を入れたかったんです。

――3月に他界された、かまやつひろしさん作曲の「やつらの足音のバラード」も意外でした。これをカバーする方もなかなかいないのでは? アニメ『はじめ人間ギャートルズ』も古い作品ですし。

 多分そうですね。歌詞が「何も無い所から命が産まれて、恐竜が産まれて、そして人間の足音が聞こえてきて、奴らがやってきた」という内容なんですけど、これは地球のテーマだなと思ったんです。

 アニメと言われればアニメらしいんですけど、大きなテーマで考えると「人間の曲だな」と思ったんです。アニメの曲というよりも“名曲”として歌えると思ってカバーしました。ファンの方々が、かまやつさんの名曲を聴き返すきっかけになると嬉しいと思います。

――今作と、1stフルアルバム『ななみ』、2ndフルアルバム『Light in the Darkness』を聴くと声の振り幅が大きいと感じました。

 色んな歌い方をするのが大好きなんですけど、周りの意見では「ブレている」とか「どれがnaNamiなのか分からない」というのもあるんです。でも今回は誰かに寄り添いたいアルバムで、誰かの思い出に寄り添う“思い出”が主人公で、私の歌が主人公ではないという気持ちのアルバムだったので、出来るだけ邪魔をしない歌い方をしたいと思って、色んな歌声を試したんです。確かに前作とは全然違うかもしれませんね。

――前作はロック系の楽曲で情熱的に歌い上げているという印象でしたが、今作はヒーリングミュージックというくらい優しいですよね。

 元々は地声が大きくて、大声で歌う歌い方が自分のスタイルです。今回は180度歌い方を変えたので、新しい挑戦でもあります。

――これだけ振り幅のある表現力は更に可能性が広がりますね。今後どういったシンガーになりたいですか?

 今回、カバーをさせて頂いたという時間のおかげで、書きたい事もたくさん増えました。歌い継がれる曲を作りたいと純粋に思い、シンガーソングライターとしても大切な事を思い出せた時間になりました。自分にしか書けない曲をもっと書きたいなと、前よりも思うようになりました。

――コンポーザーとして世の中に名曲を残したいという思いは強い?

 誰かの人生の1ページになった曲を作りたいです。どの曲を聴いても「この時何歳だったの?」とか、お母さんのご飯の味を覚えていたりとか、夜の団らんでご飯を食べている時とかを思い出せるって凄いと思うんです。4分くらいの曲なのに、それがその人の人生100人通したら90人くらいがそうという事が本当に凄いと思うんです。

――記憶を呼び覚ますような曲は良いですよね。私も今作の中で、TVの前でラジカセで録音をしていた曲があるんですよ。

 そうなんですね!

――今の若い人は、naNamiさんからはどう見えていますか?

 今回こういった曲たちをカバーさせてもらったんですけど、昔はこんなに純粋な歌詞で夢と希望が詰まっている曲が「売れてる」という事があったのが、現代では無いという事が今の人たちにとって寂しいことだなと思います。

 今は例えば徳永英明さんの楽曲「夢を信じて」というような言葉がタイトルになっている曲は無いですし、そう思うと、この時代の方々が持っていた希望は今の子供達には無いのだろうなと思うと…。未来に何が出来るだろうと思います。

――その一旦を担えるようになりたいという所はありますか。

 そうですね。特に自分が経験してきた事と同じ事を経験してきた人達は、私がやらないと誰がやるんだろうと思います。今回こういった楽曲たちをカバーしたからこそ、強く感じました。

あえてライブハウスでやってみたい

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――リリースライブも6月に大阪と東京でおこなわれます。

 私はライブが一番大好きで、何よりも自分が時間を自由に扱える時だと思っているんです。だからそこそ、CDを聴いて頂いた上で“ライブ”というものに来て頂けたら一番私が伝えたい事が伝えやすくなる場所だと思うので、是非ライブで皆さんとお会いしたいと思います。

 ウィスパーボイスという歌い方で今回初めての新しい挑戦なので、新しい自分のステージにもなると思います。他のカバーもしたいなと思っているので、私の曲を知らない方でも楽しめるように、皆さんが懐かしめるような、そんなライブにしたいと思っています。

――以前「SILENT STREET LIVE」という、naNamiさんがボックスに入って、お客さんがヘッドフォンで聴いてもらうというライブをしていましたが、これはどういったところからこのアイデアが?

 路上ライブをずっとやっているツアーがありまして、都道府県で73回の路上ライブをする企画です。「naNami」の語呂で73回なんです。その時に、警察に止められる事が多かったので、何も言われないライブがしたいなと思って、ある意味「SILENT STREET LIVE」という事で、目に見えるものは凄く邪魔かもしれないけど、耳に聴こえる害はないというライブをしようと思ったんです。アメリカとかのクラブではイヤホンを使うというのが流行っているので、そこからヒントを得たんです。

――反応はどうでしたか?

 ファンの方ではなくても、ライブの行程が面白いので、おじいちゃんからおばあちゃんも止まってくれて最後まで聴いてくれたんです。そのもようの動画もYouTubeに上がっています。

――またやってほしいですね。

 そうですね。あえてライブハウスでやってみたいですね。イヤホンを使ってみたりして。

(取材=村上順一/撮影=冨田味我)

naNami「はじめてのチュウ」MV

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