LEO、日米ハーフ筝曲奏者が語る音楽のジャンルを超えた箏の魅力
INTERVIEW

LEO、日米ハーフ筝曲奏者が語る音楽のジャンルを超えた箏の魅力


記者:小池直也

撮影:

掲載:17年04月10日

読了時間:約14分

自分は日本人

普段から様々な音楽を聴いているというLEO(撮影=小池直也)

――日本人が多く出るコンクールで1位を獲ったときの印象は。

 私はハーフなので、「自分はどっちなんだろう?」と、小さい頃から考えさせられるんですね。でも、アメリカより日本の方が自分は好きですし、ハーフなんですけど日本人なんですよ、中身は。自分のアイデンティティとかを楽器を通して表現できるのが楽しかったんですね。

 英語と日本語と両方喋っていると、中学生の頃までは英語がそんなに上手に話せなくて、言いたいことが全部は言えないんですよ。なので、目立たない感じの子だったんです。でも楽器を弾いている時は注目されるので、それが凄く好きで(笑)。「演奏を通して自分の言いたい事が言える」という感覚があったから、音楽に熱中することができたんだと思います。

 学校の友達も日本人じゃないので「お正月に流れるああいう感じ」といった先入観がないので、普通の音楽を聴く感じで聴いてくれましたね。だから同級生には割とウケは良かったですね。学校の中でたまに箏の演奏なんかすると「凄くよかった! また聴きたい」と言ってくれる友達は結構いました。やはり外国のノリなので、声出しながら拍手してくれたり(笑)。凄く嬉しかったです。

――箏で今後はポップスを弾くことは?

 出したアルバム『玲央 1st』にも、ジャズの「テイク・ファイブ」が入っています。箏で古典を弾く時と、ポップソングを弾く時では随分奏法も変わるんです。でも、色んな事ができる演奏家にはなりたいなと思っていて、古典や箏本来の演奏もできるようになりつつ、普段、箏を聴かない人でも楽しめる音楽も弾けたらいいなとは思っています。ただ、箏でバンドを組むと、ちゃんとした箏の曲を弾く時間が少なくなってしまうと思います。

僕のやりたいのは、箏で演奏する、箏の曲の良さを伝えたいので、バンドを組もうとは今は考えていないですね。

 普段、箏を聴かない人からすると、敷居が高かったり、難しい音楽だと思うんですよ。でも魅力がある楽器なので、聴いてもらえたらわかると思うんです。だから、わかりやすい曲を弾いて、敷居を下げて本来の良さを出せる楽曲を弾きたいとは思います。新しい曲も良いんですけど、昔の曲も良いところがあるので伝統を守りつつ、色々新しい事に挑戦をしたいと思います。

――クラシックの中にも「インディー・クラシック(若手クラシックアーティストや楽団がインディレーベルを設立するなど)」の様な新しい動きが起きています。三味線をエレクトリックに改造する奏者も現れていますが、箏もそういう動向があるのでしょうか。

 あると思います。でもエフェクトなどをかけると、箏自体の持つ音色の深さが無くなってしまうんです。そういう事をやって、新しい人に聴いてもらって、箏に興味をもってもらうのは大事ですが、やはり伝統も守らなくてはいけないので僕は両方できたらいいなと思いますね。

 それでも興味はあります。箏はそんなに大きな音が出ないので、マイクを付ける事はあります。エフェクトに関しては、やった事はないですけど、ループステーション(フレーズを繰り返す装置)を使ったら面白いんじゃないかな、とは考えています。

――この春から大学に進学されるそうですね。

 はい。東京藝術大学の現代筝曲科で学ぶのですが、たぶん基礎をしっかりと学ぶことになると思います。ピアノでいうバッハみたいに、日本の古典を勉強して基礎を固めつつ、他の科の人と仲良くなって色んな音楽活動ができたらいいなと思います。古典の世界も奥が深くて、今でも古典と現代曲を両方高いレベルで演奏できる演奏家はめずらしいんですね。将来的に僕は、両方高いレベルで演奏できるようになりたいんです。

 ですので、今まではコンクールで現代曲ばかり演奏してきたのですが、これからは古典をしっかり学ぼうかなと。箏は中国から伝わってきた楽器なんですが、その当時は絃が12本で今の箏の形と違うんです。今は13絃なんですけどね。僕はインターナショナルスクールで勉強したこともあり、日本の歴史に詳しくないので、そういったところも勉強したいです。

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