井上陽水、唯一無二の世界観で魅せた「UNITED COVER2」東京公演
アンコールは前向きな曲
徳を積むための善行の一つとして取り入れた15分休憩を挟み、シンセサイザーの音色に導かれるように再びステージに登場した陽水。叙情的なイントロからゆっくりとマイクに近づき「ジェラシー」を披露。妖艶な紫色のライティングが「ジェラシー」が持つ世界観を強調しているかのようだった。
黄金色の照明が後光のように陽水を照らす。「とまどうペリカン」、そして、ブルースロック・フィーリング溢れるアレンジで魅せた「嘘つきダイヤモンド」へと続く。長田の乾いたギターサウンドに小島の歪んだオルガンが彩りを添える。そこに陽水の誰にも真似の出来ない独特のタイム感と歌声で歌い上げていく。
そして「最後のニュース」を披露。疑問を綴ったメッセージをトーキングスタイルの歌唱法で聴かせる。この説得力は陽水ならではと言えるだろう。おそらく、他の誰がこの歌を歌ったとしても、意味をなさないのではないかと思えた。間奏の突き抜けるようなコーラスも鳥肌が立つほど。
陽水の柏手を合図に「氷の世界」へ。同タイトルのアルバムが日本初のミリオンセラーに輝いた説明不要のヒットナンバーに、会場も手拍子で盛り上がった。40年以上も前の楽曲とは思えないほど、現在もダイヤモンドのように光り輝く。『UNITED COVER2』に収録されたアレンジに乗って陽水もステージを上手、下手へとリズムに乗りながら移動し、会場をひとつにしていく。本編ラストは「勝者としてのペガサス」。憂いを帯びた陽水の歌声がNHKホールに響き渡り、本編を終了した。
感動を伝える大きな拍手から、アンコールを求める手拍子に切り替わる。寸分の乱れもない一体感のある手拍子に呼び戻される様に、衣装を着替えた陽水がステージに再び戻ってきた。大歓声が巻き起こる中、陽水は「(本編)は前向きな曲が少なかった」と語り、アンコール1曲目は、自身が作詞しているPUFFYの「渚にまつわるエトセトラ」、そして、メンバー紹介を経てヒットソング「夢の中へ」を熱唱した。アップテンポなナンバーに、今まで座っていた観客もスタンディングで盛り上がった。鳴り止まない大きな拍手の中、陽水がもう1曲プレゼント。「夏の終りのハーモニー」をしっとりとダイナミクス豊かに歌い上げ、NHKホールでのライブの幕を閉じた。
ライブでしか体感できない感動がこの場所にはあった。やはり音楽は生で聴くことが最善だと再確認。陽水の歌と素晴らしい演奏、そして、それを多くの人々と共有出来る空間は、唯一無二のものだと改めて気付かされたライブであった。客席からの鳴り止まない拍手と「ありがとう」の言葉たちがそれを証明していた。ツアーは4月8日の富山オーバード・ホールがファイナルとなる。(取材・村上順一)
セットリスト
井上陽水 コンサート2016「UNITED COVER2」
3月19日 NHKホール
01.ミスコンテスト
02.カナリア
03.Make-up Shadow
04.映画に行こう
05.断絶
06.リフレインが叫んでる
07.リンゴ
08.女神
09.瞬き
10.夢で会いましょう
11.ジェラシー
12.とまどうペリカン
13.嘘つきダイヤモンド
14.バレリーナ
15.最後のニュース
16.氷の世界
17.勝者としてのペガサス
ENCORE
18.渚にまつわるエトセトラ
19.夢の中へ
20.夏の終りのハーモニー
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