新バンドでは規格外の楽曲
――J-POPと異なるところを具体的に言うと?
TAKUYA 分かりやすく言えば変拍子かな。現場ではダイレクトに拍子を指定するので変拍子という言葉は使わないけど。例えば7/8(8分の7拍子)であれば「seven-eight」と。「変拍子のseven-eightね」とは言わない。通常の拍子とは異なるから一般的には変拍子と定義されているけど、僕らは別に変わった事をしている訳ではないから。
――プログレっぽい?
TAKUYA 変拍子だけで変わらないですよね。
―――貫して変拍子ということ?
TAKUYA そうですね。5(5拍子)とか7(7拍子)とか、15/16(16分の15拍子)とかも。やっぱりなんか、佐久間さんも「なんじゃこれ」っていうような。
――4拍子(単純拍子)で割れないわけですもんね。普通の人だとリズムに乗れないというか、ちょっと前にくっているような感じになりますよね
TAKUYA それをあまり思わせないように僕は作っていますね。(佐久間さんとは)1曲だけレコーディングしたんですけど、1年半ぐらい前に。それも5拍子で、まあ佐久間さんも大変喜んでおられましたね。
――マニアックさ具合を喜んでいた?
TAKUYA 5拍子とは思えないけど5拍子というのが。「すごいね」みたいに。
若菜拓馬 「自分も(バンドに)入りたい」って言ってたもんね。
TAKUYA そうそう。「入りたい入りたい」って。「楽器がね、足りてるしね」みたいに言って断ったけどね。
――となると楽曲が売れるというところを度外視して面白いことをやろうというのが新バンドのスタイル?
TAKUYA まあね。というか、ぶっちゃけ売れていないしね。日本の音楽シーンって。CDを作ったって。だから気にするのはやめようと思って。そういうことは僕は仕事でやるから。
――TAKUYAさんがいう仕事は作曲やプロデュースの方?
TAKUYA そうそうそう。ちゃんとマスに向けたことはやっているので。だからこれは本当に、僕がどれだけ変わり者で天才かを見せつけてやる、みたいな気持ち。
プロでも弾くのが難しい楽曲の数々
――楽曲はどういう曲調ですか
TAKUYA コンセプトとしては変拍子というか、4(4拍子)じゃないんだけど、あくまでもダンスビートを意識していて。個人的には最近、ラテンとかブラックとかのミュージックに興味があって。一貫した5(5拍子)なら5(5拍子)、7(7拍子)なら7(7拍子)というループの上のリズムが主体としてあって、まあ拍子は変わってるけど、ダンスミュージックにはしている。あくまでもサルサやタンゴ、ボサノバやサンバだったり、ラテン音楽にエレキギターというか、ロックバンドのアプローチをしている。
――ある種のトランス状態になっていきますね
TAKUYA そう。少し前にサックスの菊地成孔さんが主宰するバンド「DCPRG」にギターで参加したことがあって、あのバンドも1曲20分というのがある。ずっとやり続けているみたいなんですけど。やり続けてたその先に面白味を感じましたね。
――12月25日のライブはバンドとしてどういう位置づけになりますか
TAKUYA えーとね。実は今年、バンド活動はやっていなくて、ライブも今回が3回目なんですね。コンセプトを探すのが最初の半年ぐらいだったとしたら、そこからなんとなく、さっき言ったようなやりたいことが見えてきて。それで曲を作って、夏にレコーディングをして、今途中なんですけど。にしても難しい、僕でもパッと弾けないぐらい難しい曲過ぎて。バンドでコツコツとスローなテンポで練習するところからやっている。
――アマチュアのような練習もしているということ?
TAKUYA 皆が集まってそれでは、みたいにパッとやりましょうというのは出来ない。
――「せいのどん」という感じではない?
TAKUYA プロの人でも出来ないぐらい難解なんだよね。
――レコーディングの進み具合は
TAKUYA 100%中50%ぐらいかな
――アルバム的なものを出す?
TAKUYA まだ、どういった感じで出すのかは考えていなくて、高サンプルといって、今ハイレゾって言われているけど、ちゃんと高サンプルでも録っていて。
――CDでも音楽配信でもどちらでも出せる状態にしている?
TAKUYA うん。まあ、ちゃんと作ってるんですけど。そんなに締切があるわけでもないし、こうやって遅れ遅れになっている間に、CDじゃなくてもっと良い媒体が出てきたらそれはそれで。もしくは出きても、日本で出さなくてもヨーロッパとかのレーベルに送ってもいいなって思う。
日本と海外における音楽への意識の違い
――曲調的には海外にはフィーリングが合いそうですね。
TAKUYA まあね。全くね、日本では何度かライブやったけど、この国にはリスナーはいないというか。(笑い)
――そうですか
TAKUYA うん。そうだった。けど、必ずヨーロッパとかはこういうの好きな人がいるだよなっというのは分かってやっているんですけどね。(笑い)
――アーティストで例えるとオルティカみたいな感じですか
若菜拓馬 確かにそうですね。
――日本の枠にとらわれないで活動していくということ?
TAKUYA 世界中にこういうのが好きな人は確実にいるというのは知っているので。そこに向けてコツコツとライブだったり、練習を重ねつつ、音源とかも焦りもせずに作っている。
――日本はだめですか
TAKUYA どうなだろう。好きな人もいるのかもしれないけど、そもそもそこに向かって商売とかは無理だと思うんですよね。例え1000人いたとしても。1000人のうちの選り好みがあって。それよりも各国に500人ずついるなかで各50人が好きになってもらえたらいい。僕の音楽は、例えばイタリア人とか聞いたら良くできたポップスだなって思えるように作っているけどね。あまり向こうの人は日本みたいにカチっとした割り算をするわけではないからね。日本みたいにきっちりしていないと気持ち悪いというのがないんですよね、向こうの人は。
若菜拓馬 もともと変拍子って言わないですからね。
TAKUYA そうそう言わないからね。日本人が日本の拍子を愛しすぎているところがあるから。
――向こうは変拍子と言わないんですか
若菜拓馬 「変」って言わないですね。
TAKUYA 変じゃないから。だってクラシックだって、刻一刻と変わっているわけだし。
――ということは僕ら日本人が4分の4拍子など基本的な拍子を普通だと考えてしまっているところがまずい?
TAKUYA まずくはないけど、この国はそういうのが好きなので。
――安心するというか
TAKUYA そう。