「FLOWER」は「歩いていこう!」のアナザーバージョン
――アイデアは、自分からどんどん出して行くほうなんですね。
言うほうかもしれません。でもソロデビューしたばかりの頃は、何が良くて何が悪いのか分からなかったし経験も無かったから、私が言うことなんか、へそで茶が沸かせるくらいのことなんじゃないかと思って、なかなか言うことが出来なくて。でもいろいろな楽曲を歌っていくうちに自分の中でも欲が出て来て、言うだけならタダだし、言ってダメだったらダメと言ってもらえれば成長出来ると思うようになって。それで今回のように「ちょっと試させてください」という感じで、やらせていただくことが多いです。1stアルバムの時は「和楽器を取り入れてみませんか?」と1曲だけ提案させていただいたのですが、2ndアルバムの時はがっつりと関わることができて、たくさんアイデアを提案させていただきました。
――また「Lost Thorn In My Side」は、打って変わってダンスチューンですね。
R&Bっぽさもあり、ジャズっぽさも入って来ますね。この曲を選んだ時は、自分が歌いこなせるかは度外視して曲の格好良さにただただ魅せられて選んじゃったんですよ。だからやってみたら、歌うのがすごく大変だったみたいな(笑)。とにかく歌唱テクニックが必要とされる曲なんです。歌のキレの良さと、サビ手前の<ほんのちょっとシナリオ書き換えて>という歌詞のところを「ダダダダダダダッダ~」って歌うこの感じ、何て言えば良いのかな…?
――ルーズな感じ?
そうそう、そういう感じです。それにフェイクも細かく半音ずつ変化する感じで入っていたりとか。
――フェイクがたくさん入っているのも聴きどころですが、フェイクはデモの段階で仮歌が入っているんですか?
サビや間奏のフェイクは入っていたんですけど、Dメロの後のロングのところは入っていなくて。あったほうが良いかもと思って、レコーディングの当日に「フェイクを入れたいです」とお願いしてみました。完成しているオケとコードに対して作曲大喜利するような感じで、ディレクターさんと一緒に、その場でメロディを出し合って考えていきました。最初に何パターンか歌ってみて、そこから良いものを選んで。「でもここは音が不協和音になっているから変えよう」とか、「あっさりしすぎて、耳に残らないんじゃないか」「じゃあこういうのを入れよう」という感じで、話し合いながら。
――すごくクリエイティブ感がありますね。
創作活動をやっている感覚が、すごくありました。こういうことは、キャラクターソングで必ずしも出来ないわけではないけど、ソロの現場で気心の知れているスタッフさんたちとやれる環境だからこそだなって思いますね。
――そしてアニメ盤のみの3曲目に収録の「FLOWER」は、「群青インフィニティ」に通じるロックチューンだと思いました。
「群青インフィニティ」に通じるとおっしゃっていただいたのは、明るくて泣ける部分だと思うんですけど、今回のシングルにおける位置づけとしては、表題曲「歩いていこう!」のアナザーバージョンのような気持ちで選びました。それにやっぱり、みんなで「オイ!オイ!」と盛り上がれる曲が欲しかったので、こういった元気系の曲を選びました。
――「歩いていこう!」のアナザーバージョンなんですね。
「歩いていこう!」が、明るく優しく夢への希望を歌っている楽曲だとしたら、「FLOWER」は、挫折を知っている人が夢を追うための曲です。自分一人のためだけじゃなく今は遠くにいるかもしれない誰かに誓うように、夢に向かって進んで行く歌詞だと思います。ここは作詞・作曲・編曲の篠崎あやとさんと橘亮祐さんが、意識したかどうかは分かりませんが、TVアニメ『恋する小惑星』の主人公の木ノ幡みらと真中あおが、遠くに離れていたけどお互い交わした約束を覚えていて…というところとも通じていると思っていて。それも「歩いていこう!」のアナザーバージョンだと感じたポイントの1つです。
私も声優や歌手を目指す過程では、いろいろな出会いや別れがあって、その人たちの顔を思い浮かべながら歌いました。そういう意味では、くしくも声優デビュー10周年記念企画第一弾となるシングルの収録曲としても、相応しいなと思いました。
――サビで転調するのがグッとキますね。今風に言うとエモい。
分かります。すごくエモいです(笑)。上がり切らないのが良くて、ここが絶妙にエモいです。