今は音数をしぼったシンプルな音楽にひかれる
――先行配信の「brand new」は伊藤さんが作詞をされていますね。
コライトになるんですけど、作詞家さんとスタジオに入って「こういうことを書きたい」と話しながら組み立てていきました。
――伊藤さんの想いが一つひとつの言葉に込められていると感じました。サウンドはすごくおしゃれですね。
サウンドは、かなり力を入れています。実はこの「brand new」ができるまでに一回立ち止まってしまったんですよ。本当だったらもう少し前に制作は終わっている予定だったのですが、自分がやりたい音楽はどういものなのか? これから自分が1年後2年後とやっていく中で、表現や目指す音楽性はこのままでいいのか、と考えるようになっていったんです。だから自分のやりたいことをもう少し具体化するために、1カ月くらいストップさせていただきました。そこからいろいろな音楽を聴き、ミュージックビデオをみて、自分の目指したい方向性や表現したいものをスタッフさんとも何週間も話し合って、ようやく「これがやりたい」と決めて作ったのが「brand new」だったんです。今はこういう方向性をやりたいんです。
――どんなきっかけで、やりたい音楽の方向性が見つかったのでしょうか?
私はこれまでダンスミュージックといったものをがっつりやってきたので、いろいろな音が入っていて、それぞれ強い、という音楽に触れていたんです。でも今はシンプルにギターだけとか、ピアノだけといったものを聴いて、「一つの楽器だけで、これだけ綺麗な音が出せるんだ」と感動するようになったんです。私もどちらかといったらガッツリ歌うというより、囁いてるような優しい感じのする流れの良い声を出したいから、それに合わせてサウンドもこういった方向にたどりついた感じです。
――そういうことだったんですね。
この「brand new」の後に、スリーピースバンドのOvallさんに出会ったんですけど、もうドンピシャで今私が好きなバンドさんなので。そういうことも刺激を受けている一つの要因なのかなと思います。
――この曲は歌も難しそうなので、挑戦されていると感じましたが。
でも意外とこのキーのファルセットは、いろいろなレコーディングをしている中で「この声がいい」とよく言われるんですよ。私はどちらかというと今までしっかりした声を出す歌い方をしてたから、ここの声がいいと言っていただく機会になかなか出会わなくて。だから「brand new」に関しては、それを本当に活かした曲になっているかなと思います。
――「brand new」のMVはクールな雰囲気ですね。
そうですね。色は結構カラフルだけれども、深い色も使っています。もともとファッションは好きだったので。スタイリストさんとも相談しながら、今年の秋冬らしいものをどんどん取り入れていきたいし、「brand new」というテーマもあるので、新しい自分、何かと入れ替えて新しいものを取り入れようという意味では、カラフルなものを入れていきたいという話もしました。それで洋服と映像に落としこんでいただきました。こちらはKASICOさんという監督さんにお願いしたのですが、色味使いがすごく好きです。後は映像と映像の合間に入れていくちょっとした仕掛けがとても素敵で、作品を見ていた時に「いつかやりたいな」と思ってたんです。でもKASICOというお名前だけで、女性だと勘違いしていたんですよ。今回「brand new」でお会いしたら男性の方だったという(笑)。私のMVはクールでおしゃれなんですけど、他の作品はKASICOさんが描かれた絵が入っていて、ちょっとポップでファニーといったテイストだったから、より女の人だと思ってしまっていたんですよね。(笑)