ACIDMAN「耳の裏でも音を捉えている感じ」大木伸夫が考えるアナログの魅力
INTERVIEW

ACIDMAN・大木伸夫


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年11月19日

読了時間:約10分

アナログは耳の裏でも音を捉えている感じがする

ACIDMAN・大木伸夫

――驚いたのが、オリジナルはアナログテープでの録音だったとのことで。

 そうなんです。3枚目くらいまで僕らはアナログでやっていました。当時のエンジニアさんのこだわりで、「アナログのほうがレンジが広く録れる」と説明をして頂いて。「そのかわり値段は高いけどね」みたいな(笑)。でもその時は予算とか考えないでやれたので幸運でした。アナログで録ったものがアナログLPになるということは、ちゃんと元々の周波数が出るということなので嬉しいです。

――デジタルで録ったものをアナログレコードにするのと、アナログで録ったものをレコードにするのとではまた趣が違うんですよね。

 そうなんです。アルバムの3〜4枚目まではしばらく意地でアナログで録っていました。そっちのほうがやっている感もあって。

――でもデジタルを嫌っていたわけではないんですよね?

 嫌っていたわけではないですけど、アナログでやっている手法って好きなんです。この間もシンセサイザーっぽい音を声で出してみたりとか。その音は実はシンセで一発で出るんだけど、やっぱり声でやったほうが良かったり。アナログの偶発的なものが好きなんです。

――揺らぎや、2度と同じ音が出ない、一期一会なところですよね。

 そうそう! そこが好きなんです。

――アナログレコードもかける度に微妙ですけど音が違うというのも魅力の一つですよね。ところで大木さんがアナログレコードにハマったきっかけはどんなものだったのでしょうか。

 もともとレコードプレーヤーは家にあったんですけど、レコードは10枚くらいしか持っていないしほとんど飾りでした。シガー・ロス(アイスランドのポストロックバンド)が僕は大好きなんですけど、ある日レコードが発売されるというのを知って、ジャケットも欲しかったし「一回買ってみよう」と思って。

――ジャケットの大きさも魅力的ですから。

 そうなんです。だから音はわかっているので、「改めて聴かなくてもいいかな?」くらいの感じだったんですけど、せっかく買ったので試しに聴いてみたら音がCDとはすごく違ったんです。いままでCDは耳で聴いていた、といった感覚でしたが、レコードは明らかに耳の裏でも音を捉えている感じがしました。体で聴いている感じが絶対にあって、「こんなに違うんだ」と。もちろんCDも素晴らしいんですけど、アナログは生々しくて、音を浴びているという感覚。

――その感覚わかります。

 僕の親しいスタッフがアナログマニアでレコードを2万枚くらい持っているんですけど、その人が僕にアナログを勧めてくれていて。なんとなく欲しいなと思っていたものが、そこで一気に開いて。そこからレコードプレーヤーやアンプを買い替えたり。でも、オーディオってもう沼じゃないですか? 調べれば調べるほど、どんどんハマって行きました。でも、沼にハマるとオーディオって何百万円にもなる。「これ以上行ったらヤバい」という手前で今は止めています(笑)。

――確かにオーディオはハマると凄いところまで行きますから…。『創』もご自身のシステムで聴かれましたか?

 ちゃんとした出来上がりはまだ聴いていないです。テスト盤の素材が違うものでは聴きました。その前にマスタリングスタジオで良い音で聴いてしまっているので、それよりはどうしても(環境的に)落ちた自宅で聴いているから、「やっぱなあ」くらいな感覚で。もちろん悪くはないんですけど。だから、家やカーステレオで聴くのはチェックのために聴いているという感覚が強いです。

――そういえば今回は2枚組ですね。アナログって1曲目が一番音が良いじゃないですか? 枚数がたくさんあると、そこはかなりポイントが高いと思うんです。

 そこはそんなに気にならなかったです。というのは33回転でけっこう余裕をもって溝が掘れているから、円周が小さくなってもそんなに劣化はしないという話は頂いていました。最初は45回転でチェコでカッティングをやってもらったんですけど、でも僕は33回転の方が好みで。

――こだわりの33回転なのですね。

 そうなんです。チェコでカッティングしてもらった45回転だとちょっと音量が下がっていて。クオリティは良かったんですけど。それでプレスメーカーを東洋化成さんに変えて、33回転でカッティングし直しました。そのカッティング現場にも立ち会わせていただいて、音量差がないかなど確認をさせてもらうところまでやりました。カッティングしているところを見れたのは凄く感動的でした。

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