監督が絶賛した齊藤なぎさの姿勢
本作『ナツヨゾラ』は、芦屋を舞台に、田中ゆみ(齊藤なぎさ)と同じ中学校に通う幼なじみの小杉亘(宮世琉弥=M!LK)の淡い恋模様を描く。亘が、母親(岩佐真悠子)の再婚を機に引っ越すことになるものの、ゆみに黙っていたことで仲が気まずくなった2人の前に、小学生の間で広まっていた噂、願いが叶う花火が打ち上がる――。
「『え!? 私が!』とびっくりしました。お芝居は舞台でしかやったことがなかったので『どうしよう』という不安もありましたが、楽しみという気持ちもありました」
出演が決まった時、自身も驚いたというが、演じるにあたっては役柄の背景などを深く考えたという。演じたのは中学生の田中ゆみ役。齊藤とは実年齢も近く、監督からは「自分のなかで作り込みしすぎず、その役に近づけすぎず、自然のままで演じていいよ」とアドバイスを受けた。
「演じるためには、その子(田中ゆみ)のことを理解していないといけないと思いました。その子についてあらかじめ決まっていた設定はありましたが、それ以外の部分、例えば好きな食べ物や何年バレエをやっているかなどイメージを膨らませて、更に好きな男の子(小杉亘)と自分(田中ゆみ)の関係性をしっかり考えて臨みました」
実際にスクリーンに映る彼女の演技は自然体だった。

齊藤なぎさ
向井宗敏監督は先日都内でおこなわれた完成披露試写会で彼女との出会いをこう振り返っている。「たまたま、なぎさちゃんが出演した舞台を見て、今回脚本を担当した人に『すごい人がいるんだよ』と言われて、その時に会ったのがなぎさちゃんだった。それからシナリオを書き換えた」。
そして、彼女の姿勢や記憶力の高さについても称賛した。「なぎさちゃんは現場では台本を一切見ない。台本を一部変えても、または付け足しても開かないで全部頭の中に入れて。すごいと思った」。
そんな齊藤だが、撮影中は苦労もあったという。バレエの練習シーンでは、自身も2年間のバレエ歴はあるものの「『一番』(バレエのポジション)と『ルルベ』(バレエのフォーム)は覚えていましたけど…回るシーンは、実は15回ぐらいやっていて、途中足が痛くなりました」。
一方、同性代の共演者が多く「話しやすくて和やかでした」と振り返るが、「ずっと女子校だったので、同年代の男の子と話す機会がなくて。なのでこうした物語は新鮮というか、未知の経験でした。役になり切って演じました」。
しかし、その初々しさが、田中と小杉の着かず離れずのピュアな距離感を表現するのによい影響を与えた。恋する田中の表情を見たメンバーも絶賛の声を寄せた。山本杏奈は先の舞台挨拶で「こんな顔するんだと尊敬しました」、佐竹のん乃も「普段は見られない表情が見られて、すごく可愛かった」。
撮影中も「ずっと緊張していました」という齊藤。自身にとって本作での経験はどのようなものになったのか。
「撮影期間は3日間でした。タイトなスケジュールのなかで、気持ちの入れ方や声の出し方などをすごく考えましたし、勉強になりました。舞台とは全く違う声の出し方でしたので、そうした初めての経験は今後に活かせていけると思います。人生で一番、緊張しましたし、充実した時間でした」
そんな齊藤の緊張を和らげる方法は「お母さんにLINEする」ことだという。
改めて完成した作品を観て「自分が大きなスクリーンに出ているのが恥ずかしくて『どうしよう』と思いましたけど、純粋に嬉しかったです」。
更に「それと4つの短編からなるオムニバスで、私の作品ではない3つの作品が面白くて見入りました。市原隼人さん、飯豊まりえさん、鈴木伸之さんが主演を務められて、そのなかに私がいていいんだろうか、とも思いましたが今はすごく嬉しいです」。
心なしか、自信がうかがえた。
そして、=LOVEとしては10月30日にシングル「ズルいよ ズルいね」が発売される。「これからも応援していただけるようになりたいですし、新しいファンの方もイコラブの沼に落とせたらなと思います」と意気込んだ。

齊藤なぎさ
あとがき
インタビュールームに現れた彼女は透明感があり清楚な雰囲気があった。ピンクと白のチェック柄のワンピースというファッションも相まってまさに人形のよう。腰を掛けるライトグリーンのソファは青々と生い茂る野原に変わる。その姿は絵本から出てきた主人公の少女のようだった。指原莉乃が「人類で最も可愛い子」と称える理由が分かった気がした。アイドルと女優、2つの道を歩き始めた彼女。一つ一つの経験が刺激になっているというのは本インタビューでも語っていた。自身も影響を受けたアイドル像、そしてもう一つの夢・女優という理想像に向けてひたむきにまい進する彼女の今後が期待される。
(おわり)