一生で出会えるか出会えないかの“最強タッグ”
――お互いをわかり合うという積み重ねがあってこそなのですね。戸田さんがオーダーを出して、それを超えるものが来ている?
戸田恵子 そうですね。ドンピシャという感じです。未知なところに入ってきた音で出てくるから、私も未知なところで想像しているので、そこにハマッてくるというか。それが凄いんですよね。
――言語化されていない考えが言語で返ってくるという。
戸田恵子 「なるほどね」という感じで。それがいつも楽しいです。本当にゼロのところからものを作るから、いつも空想でしか話をしていないので、日頃なるべくそういうことを見るようにしているんですけど、共通言語を持つために色んなものを見に行ったりします。いざ何かをやろうというときには架空のことしか言ってないわけですから、「こんな感じの曲」とか。それでゼロから作っていくので、出来上がったときにドンピシャだとびっくりしますね。
――言い合ったりすることはあるのでしょうか?
戸田恵子 ものを作るときに言い合ったりはないよね?
植木豪 普段しょうもないことではありますけど(笑)。ものを作る上ではないですね。
戸田恵子 あったとしても、ちゃんと真っすぐ説明を受ければわかるし。
植木豪 ほぼないですけどね。僕は色んなデザインをやっているんですけど、姉さんは最初に伝えるときのビジョンがしっかりしているから一番決まるのが早いです。「これ、何か違うんです」という“何か”というのがないんです。作っていく上でこれはけっこう大事で。そういうものがなくて、「ここがこう違うからこうしてほしい」「僕はこういう理由があってこうしてます」と具体的に話しあえるので、そういう意味で言うと早いかなと。依頼を受けたときにバッと受けることができるという、チーム力が上がっているのかなと思います。
――そういった関係性ができる相手は、一生で出会えるか出会えないかだと思います。
植木豪 姉さんで言ったら三谷幸喜さんとか、舞台のなかではそういう存在なんだなと思います。
――それぞれの分野でそういった相手がいると。
植木豪 声優さんの中でもそういうやりとりがしっかりできていたりとか。
戸田恵子 みんなあると思うんですけど、ジャンルが違うからさらけ出しやすいんですよね。やっぱり同業者だとお互いにプライドみたいなものがあるから、そこを崩してまでというか。三谷さんも舞台でガッツリいつもやるから、そこではさらけ出してやっていますけど、その他の部分を出すということは、ビジネスライクにやっているから。ここはちょっとそこを超えて色んなことを共有しながらここまでやってきたので。
植木豪 僕のオトンとオカンとめっちゃ仲良いですもの(笑)。僕よりもやりとりしているくらい。
戸田恵子 歳が近いからね(笑)。そういうのは、同じかぶった部分で役者とか色んな仕事しているけど、基本はダンサーとして何かしていて、私は女優としてやっているというところで、同業者に言うより色んなことが言いやすいし、逆に相談もしやすいし、何かマインド的なところでも私はネガティヴだからそういうことを言えば必ずポジティヴで返してくれるから。歳下になぐさめられながら(笑)。
植木豪 ネガティヴになる必要ないのになって思いながら。僕もそこは実は適当ではなく、自分の色んな経験でちゃんと答えているというか。そういうところは、もしかしたら僕は他の人よりも長けているのかもと思うときがあって。悩んでいる人を見て「違うぞ」って思うんです。
――良いところを探すのが得意なのでしょうか?
戸田恵子 神様なのよ!(笑)
植木豪 実際、褒めているつもりはないんです。悩んでいることも「その悩み、ヤバいですね…そこを悩むんだ!」と。それはもうネクストレベルなんです。普通の人だったら喜ぶレベルのことをヘコむんだなって。
――レベルの高い悩みなんですね。
戸田恵子 そんなことないんですよ…。
植木豪 僕のなかでは完全にそうなので、そのまま言っちゃうんです。本心なんです。
戸田恵子 身内として弟みたいにしているから、自分なりになんとなくわかっているけど、言ってみてポジティヴな意見が聞けると「そうだな」という安心感はありますよね。「任せて大丈夫だ」と思っているから、色んな作業や楽曲とかも、自分に意見があったら言うけど、そこで迷うことはないので新鮮な意見ですね。舞台でも役者としてあがいているものを露呈して見せるわけですけど、苦しんであがいているのも全部わかっているから、それを見た上での意見はまず嘘はないなと思って。なるべく嘘のない人に最初に見に来てもらいたいです。だってみんな褒めるから。
植木豪 でも、だいたい面白いんですよ!
戸田恵子 (笑)。でも、ちゃんとジャッジする人に最初に観に来てほしいんです。なかなか「駄目ですよ」って言う人いないですからね。私がリスペクトしている役者さんがいますから、そういう人に「なるべく早く来てください」って電話するんです。豪にも。この子はもしかしたらセリフのことをわかっていないかもしれないけど、感性が人よりあるので。そこでまずジャッジしてもらえれば安心なんです。「イケてますよ」とか「イケてないですよ」とか、そういうのでいいんです。だからなるべく早く観てほしいんです。感覚的なのは間違いないので。それってあまり年齢とかは関係ないんですよね…。私はわりと理詰めなんですよ。
植木豪 もう僕が“左利き”、姉さんが“右利き”という感じです。
――正に最強タッグですね。
戸田恵子 上手いこと言うよね(笑)。
――来年のライブはどのようなパフォーマンスになりそうでしょうか?
植木豪 この楽曲を最高に表現していくというのが大事かなと思っています。それこそ既に映像班を入れてライブPVみたいなのを作れると考えていたり、出ているメンバーも日本チャンピオンとか、タップダンスができるHip Hopアーティストとか、歌えるダンサーがいたりとか、そういう特殊な奴らを入れて、世界観を広げつつ、女優とダンサー、歌のライブということで、他にはない新しいパフォーマンスを見せられたらいいなと漠然と考えているところです。この漠然が一番大事なんです。それを形にしていくのはたぶん早いと思うので。
戸田恵子 今作の5曲以外にも、ユニットで作ってきたものが他にも私のアルバムに入っているのもあるので、2人で作ったものは全部出したいなと思っているんです。2人で作詞作曲したものも、他のアルバムで豪が作詞作曲してくれているものも、全部この際出していこうかなと。あと普段あまりトークをする機会もないので、BackGammonとしてのトークもしたいなと。いつも何かやっているなかでちょっとだったことも多いけど、今回は全面的にいけるので。
――お芝居が入ったりもしますか?
植木豪 そうですね。噛み散らかしてメチャメチャやります(笑)。
戸田恵子 短い10分くらいの芝居を私が書いてもいいんだけどね。
――観てみたいです(笑)。
植木豪 それをダメ出しされているのをステージ上でやるという(笑)。
(おわり)
作品情報
『Show Must Go On』
2019年9月25日リリース
BZCS-1181 \1,818 + tax
<収録曲>
01. Show Must Go On
02. Dancin' on the earth
03. helplessness
04. 幸せに連れてって
05. ブギウギ★ベイベ