ダイアモンド☆ユカイにとって「ロック」とは、キャリアを経て気づいた自身の声
INTERVIEW

ダイアモンド☆ユカイにとって「ロック」とは、キャリアを経て気づいた自身の声


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年07月25日

読了時間:約13分

俺にとっては声がロック

ダイアモンド☆ユカイ

――「胸の振り子」は戦後間もなくの曲で、まだユカイさんも誕生していない時の曲ですが、収録されたのにはどんな思い入れがあったのでしょうか。

 これは日本の歌謡界へのリスペクト、原点に戻るという意味で歌った曲でさ。この曲は服部良一さんが作曲しているんだけど、おそらく日本の歌謡曲は古賀政男さんと服部良一さんの2人の派に大きく分かれるんじゃないかな。その後に中村八大さんや筒美京平さん達が出てきてさ。

――もう一曲の「花 ~すべての人の心に花を~」はどのような思いで選曲されたんですか。

 これは川原さんからのリクエストだね。アコギ一本でユカイが歌ったらいいんじゃないかと。こういう曲は好きだけど、難しいんだよね。レコーディングの時に沖縄の音階を残すのか、消すのかというところで議論して、でもリスペクトがあるからこそ残しつつ歌って。

――どんな曲調でもユカイさんが歌えばユカイさんになってしまいますよね?

 好きな曲やアーティストの曲はやっぱり難しいけどね。影響を受けてるから、そのニュアンスが出ちゃうよね。やっぱり好きな人の歌とか真似したくなるからね。

――「デイ・ドリーム・ビリーバー」を歌っている忌野清志郎さんは、ユカイさんのお好きなアーティストのお一人だと思うのですが、そういう意味では難しいんですね。

 この曲のオリジナルはモンキーズだけど、もうこの「デイ・ドリーム・ビリーバー」の日本語詩は清志郎さんの曲みたいになってる。アレンジはよりモンキーズに近い形で、歌は“清志郎色”をカットした歌い方を目指してた。

――どの曲もそうですけど、ユカイさんの曲になっていると思いました。

 そう言ってもらえると嬉しいよ。沢田研二さんの曲とかは本当に苦手。好きだから出ちゃうんだよね。川原さんからも沢田さんに似てると言われて、「バレたか」みたいな(笑)。「きめてやる今夜」は裕也さんのバージョンを歌ってるんだけどね。それが沢田さんからの希望でもあった。何故だか嬉しかったよ。

――そうだったんですね。さて、8月2日には東京アメリカンクラブでディナーショーがおこなわれますが、どのようなショーになりますか。

 たくさん曲もあって、今自分が歌いたい歌にこだわったライブにしたいなと思っていて。ディナーショーって通常、1時間ぐらいなんだけど、このショーは音楽も2時間近くキッチリやるから。

――ゲストは加藤登紀子さんですね。

 リスペクトしている人を呼んで、自分のお気に入りのミュージシャンと贅沢な時間を過ごすというね。この前もオーチャードホールでのライブを観に行かせてもらったんだけど、登紀子さんは年齢を重ねる毎にどんどん歌が深みを増して、色気も増して今が一番カッコいい。もちろん昔から登紀子さんの曲は知ってはいたんだけど、自分のラジオのゲストに2回くらい来て頂いて、そこでまた登紀子さんのことを深く知ることになって。「エディット・ピアフになりたかった」話とか聞いて、「登紀子さんはピアフを目指してたのか」とかね。

――ユカイさんはシャンソンにご興味は?

 うーん、何曲か好きな曲はあるよ。厳密にはフランスでシャンソンというのは歌がある音楽は全部シャンソンみたいなんだけどさ。

――そうなんですね。さて、ユカイさんにとってロックとは何だと思いますか。

 その答えは簡単そうでなかなか難しいよね。ロックって世代によって感じ方が全然違うと思うんだよ。だから世間でのロックというよりも自分のことになっちゃうんだけど、俺ダイアモンド☆ユカイに関して言えば“声”なんだよね。たまたまこの声で生まれてきて、歌うとロックになっちゃうわけで。

 一時ロックが嫌いになった時もあってさ。何かをぶち壊していく、何か抗うものがロック。実際、いつの時代もロックってポップだったし、ヒップホップも本質はロックだと思う。そういったことを追求するのに一時期疲れちゃってさ。だから、ボサノバとか聴いたりしていた時期もあった(笑)。

 30代後半だったかな、ロックを歌うのが嫌になっちゃって、ジャズとかボサノバに傾倒していた時期があって、今聞いている雰囲気の曲を俺の歌で聴いてみたいなあと思って。それでジャズのアルバムを作ったんだけど、後で聴いてみると。周りの人達には「ロックだね」とか言われて、「俺の声は何を歌ってもロックなのか」って。それで愕然としてさ…。そこから少し時を経てバンドでロックやったらやっぱり気持ちいいなって。

――ロック魂が戻ってきて。

 『Respect』に辿り着いたときには、自分の声は何を歌ってもロックだなって開き直っていたよ(笑)。世の中に女々しい歌が流行りだしてきて、自分も女々しい歌を歌いたかったけど、何かピンとこなくて。俺の声だと合わないからそういう歌を歌うと笑われるしさ。だから、俺にとっては声がロック魂そのものだったんだなって、ことが今頃わかったんだよね。

(おわり)

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