自然な演技の一助になった斬新な撮影方法
桜田と上村を「尖っている」とたたえた山戸監督。長編映画だけでなく、RADWIMPSや乃木坂46など数多くのミュージックビデオ(MV)を撮ってきた監督ともあって、MVのような疾走感や感情的な描写が目立つ。そして、セリフはまるで歌詞のように踊る。2人ともMVへの出演経験があり、なかもでも桜田は山戸監督がメガホンを握ったMV(Aimer「Ref:rain」)に出演している。
桜田ひより「感覚として山戸監督の世界観を知っていたので、あまり不思議な気持ちにもならずに染まることができたのかなと思います。ただやっぱり、何回かやっていくなかで、完成した作品を観ると『こういう撮り方をしてたんだ』と思う所があって、山戸監督の才能が溢れている映画だなと感じました」
その撮影方法は斬新で、2人も驚きがあったという。
上村海成「自分のシーンで「え? カメラどこにあるの?」と思う時がありました。『え? 映ってるの?』みたいな。その時はどうなっているんだろう、と思いましたが、完成したものを見たときに「『あ! そう撮ってたんだ!』『そこに映っていたんだ!』みたいな。絶対に思いつかないだろう撮り方を全シーンでやっていて『すごい!』と思いました。圧巻でした」
桜田ひより「カメラがどこにあるかが分からなくて。そういう状況はたくさんありました」
カメラを意識しない演技に求めた「リアル」。山戸監督のこだわりが見え隠れする。
ちなみに、今作の主題歌になっている「夜が降り止む前に」は15歳の次世代バーチャルシンガー、家譜(かふ)が手掛けた。仮想空間を拠点としながらも現実世界への活動を開始した若き才能。その歌声は彼女たちの悲しみを優しく包み込むような深みがある。青春時代を彩る一つの音楽として物語にアクセントを加えている。
さて、最後に最近はどのような音楽を聴いているのか、2人に聞いた。桜田は2年前のインタビューでSEKAI NO OWARIとback numberを聴いていると話していたが…。
桜田ひより「最近は店内で流れている曲を一目ぼれしたときに、アプリで聴いてプレイリストにしています。いろんなジャンルを聴いています」
上村海成「僕は向井太一さん。YouTubeのおすすめ動画であがってきて、聴いたときに『なんという声!』と思って。すぐにアルバムを買いに行きました」
青春を彩る音楽は、彼女たちの耳元で鳴り続けている。