「音楽で生きて行く」と決めた曲
――「フォーエバーヤング」はどういった想いの詰まった楽曲でしょうか?
冨塚大地 大学に行っていた頃は、周りが就職活動を一生懸命やっていて「僕はこのまま音楽を続けていていいのかな?」と思っていたんです。コンテストも2位止まりだったからどうしたらいいかわからなくなって、凄く難しい立ち位置だったんです。頑張ったらバンドが上手くいくかもしれないけど、そうでない方が大きいという状況で。そこで就職活動をするかどうかというのが重くのしかかって…そのストレスと歌い過ぎとで、一度声が出なくなってしまったんです。
――心因的なものでしょうか?
冨塚大地 医者が言うには声帯が曲がっていると。高校三年生までサッカーをやっていたんですけど、サッカー選手にはなり切れずに辞めちゃったので、それがずっと心に残っていて…それを音楽でも繰り返すのかと思ったときに、それは嫌だなと。じゃあこの気持ちを曲にしようと思って書いたのが「フォーエバーヤング」です。「音楽で生きて行く」というのを自分で決めた曲でもあるし、バンドがそういう気持ちになれる気持ちになれる曲です。同じような思いを抱えている人にはきっと届くんじゃないかなと思って歌っています。
――「縋 -sugare-」の歌詞<どうせ 愛に殺されるだけなのに 「信じたい」とかまだ呟いて>という部分が印象的でした。
冨塚大地 この曲に関しては聴く人に想像力を働かせて欲しいなと思っていて、あまり語りたくないというか…この曲を書いたことは自分にとってとても大きなことで。
――本作の中でこの曲は「こういうことが言いたいんだろうな」と捉えることが最も難しい楽曲と感じました。
冨塚大地 その意図は結構あります。僕らは王道、ポップと言われることが多いんですけど、それは僕はエサだと思っていて。もちろんポップなのも本当の僕らの姿なんですけど、それに食いついてくれた人を奥に引きずり込んだときに、本当に伝えたいことやメッセージを聴いてもらえればいいと思っていて。この「縋 -sugare-」という曲は奥の方に眠っている曲というか。だからこそ、聴いてくれた人がその人自身のアンテナで受信して欲しいなと思っています。
――「Boo!! Let it go!!」はとても怒っている曲というか、そう感じるのですが。
鍔本隼 メチャクチャ怒ってますね。プレイも怒っています。
――ギターソロが鋭い感じですよね。
鍔本隼 良かったです!
飯村昇平 凶悪なソロですよね(笑)。
――「毛布の中で抱き合って」は90'sっぽいというか、懐かしさを感じます。
冨塚大地 この曲はアコースティック色が強い頃のミスチルさんやスピッツさんをコンセプトにしたアレンジにというか。
――確かにそのテイストを感じますね。白澤さんはこういったポップな曲を弾くときに意識していることはありますか?
白澤直人 基本シンプルにはしているんですけど、あとはベースを替えたりとかですかね。あまり音が暴れないように。「毛布の中で抱き合って」も自分が普段使っていないようなベースを使ったんです。優しい感じで。
――全体を通して白澤さんのベースラインは独特という印象です。
白澤直人 ベースでも歌いたいなと思って。歌に合わせているという感じですね。メロディが気持ち良い所で一緒に動く、という作り方を常に意識しています。
――ポップな楽曲だけど一筋縄でいかないというか、その点が良いなと思いました。
冨塚大地 ポップなんですけど昇平も白澤もロック出身だから、自身がやりたいことは崩さないでいて欲しいんです。バンドはポップなことをやるとしても、パーソナル的にはロックなものだったり難しいことやってもらったりと、そこはけっこう出せたアルバムだなと思います。
――「ストライド」の歌詞に<1% の可能性に 100%BET で賭けたんた>とありますね。鍔本さんは1%の可能性に100%BETしたことはありますか?
鍔本隼 野球辞めてバンドやったことですかね(笑)。
――結果、どうなりそうですか?
鍔本隼 大成功ですよね。
――「MORNING SUN」はインディーズ時代の楽曲ですね。当時も今作のようなダンスミュージック的なアレンジだったのでしょうか?
冨塚大地 そうですね。この曲からアレンジャーの方とちゃんと関わり始めたというか。この曲がきっかけで「アレンジャーさんと一緒にやるのって面白いな」と思ったんです。シンセサイザーを使うという発想は僕達4人では絶対出てこなかったと思うんですよ。最初は「これで大丈夫か?」と思ったんですけど、悩みどころが「僕達らしいかどうか」というところだったんです。だけど、いざリリースしてみてファンの方々の反応をみたら逆に「BOYS END SWING GIRLらしい」って言ってくれて。その時にスッキリしたというか。僕達は何をやってもBOYS END SWING GIRLなんだと。じゃあ何でもやれるねって思えた大事な曲なんです。それでこのアルバムは色んな表情を付けることができたんです。
――確かに今作では様々なカラーがありながらも一貫性を感じます。それこそ「ナニモノ」は最も特異なトラックというか。
冨塚大地 これはアレンジャーが入っていない白澤アレンジなんです。彼が初めてアレンジした曲でして。
白澤直人 大変でしたね。自分一人でイチから作ったので。元はバンドでやれるようなアレンジだったんですけど、やっぱり普通じゃないのがいいなと思って、チルとかHIP HOPのトラックを意識して。編曲とか全然やったことなかったんですけど、見よう見まねで打ち込んで手探りで…。
――初編曲でこれは凄いと思います。次作以降でも新たなアプローチを期待してしまいます。「Alright!! ~令和若者讃歌~」は、タイトル通り令和という時代がテーマ?
冨塚大地 これは若者に向けて書こうと思っていて。僕達は社会人4年目の歳なんですけど、同い歳で頑張っている友達とか、僕らのこと凄く応援してくれるんですけど、彼らも仕事を頑張っていて、お互いの中で戦いがあって。「僕はこっちで頑張るから、お前らはそっちで頑張れよ!」という気持ちを込めて書きました。
――みなさんは平成生まれですが、平成はどんな時代だと感じましたか?
飯村昇平 平成しか味わっていないから分からないですけど(笑)。個人的に感じるのは凄く急成長した時代だなと。例えばゲームでもたった30年で「こんなに!?」というくらい…。
――令和はどんな時代になるでしょうか?
鍔本隼 平和だったらいいなって(笑)。
冨塚大地 昭和は“激動の昭和”って言いますよね? 逆に安定して色んな新しいものが生まれたのが平成だと感じていて。令和は色んなものがもっと洗練されて、今ある一つひとつの技術がどんどん伸びていくのかなと思います。AIとか凄いじゃないですか? 今後それが音楽に結び付いていくのが楽しみです。コンピュータが作る曲とかも出てくるかもしれないなと。