個性が突き抜けた曲にしたかった
――東山さんの中では、「群青」はどんな色のイメージですか?
青空にもいろいろあって、淡い感じではなく、空が抜けるように青い感じのイメージです。空気がきれいな時の青空というような感じですね。新しい夢のスタートは何歳でも遅いということはないから、幅広い年齢層の方に受け入れてもらいたいと思ったので、薄い青や爽やかな青空よりも、深い青空をイメージして群青と付けました。
――ミュージックビデオはストーリー仕立てで、撮影では肉離れしかけたそうですけど、ジャンプのシーンですか?
サビでジャンプするのは、“東山楽曲”には多いので、ヒールの高い靴でも慣れたものです(笑)。肉離れしそうになったのは、走っているシーンで、第一走目でいきなり痛めてしまって。たった一回しか走っていないテイクが、大事に使われています。
――東山さんのジャージ姿も出てきますね。
MVには2人の設定が出てくるのですが…まず、夢に向かって今まさしく頑張っている女の子が主人公です。ジャージを着ている子がそうで、走っていたり、自転車に乗っていたり、バイトをしているシーンとか、うまくいかなくてしょげているシーンなどがあります。その子を応援しているイメージの中の存在として、もう1人の青い衣裳で歌っているシーンが出てきます。
――東山さん的な見どころはどこですか?
赤い花と青のコントラストがきれいなシーンです。歌詞に<花束>や<喝采>という言葉が出てくるのですが、それは自分の中でポイントにしていて、MVではそれが効果的に演出されています。
――その<花束>や<喝采>には、どんな気持ちを込めて?
この<花束>は旅立ちの時に贈る花束で、<喝采>はみんなが応援してくれているという意味を込めています。例えば、夢に向かって地方から上京してくる人が、飛行機や電車から故郷を遠く見つめている目線をイメージしています。
――ライブでも盛り上がりそうな曲ですね。
はい。ライブのための曲でもあります。ライブの場にいる時は楽しくて無敵になった気になるけど、終わって家に帰ると明日からまた学校や仕事があって暗くなるかもしれない。「でもまたライブで会えるから大丈夫。一度離れるけど、この曲がある限り、心は何度でも集えるよ」という、別れと再会というメッセージもあります。
――<何度も虹をかけよう>と、出てくるところがそうですね。
虹はみなさんと私の、絆の象徴なので!
――「Action」や「I Want You To Know Baby」など、ダンスチューンも収録しています。「I Want You To Know Baby」は、コンピュータのAIが恋をして自我が芽生えるみたいな歌詞ですね。
音色や歌詞をロボットっぽい方向に寄せたら、ライブでのステージングが楽しくなるんじゃないかと思って。「ロボチックにアレンジして欲しいです」とお願いして作っていただき、ボーカルもロボットっぽさを心がけて歌いました。でもラスサビでは、ちゃんと女の子の声をイメージしているんです。曲が進むに連れて、AIが人間味を増していくようなイメージですね。
――そんなアニメのキャラクターもやっていましたね。
昨年はアンドロイドの役がちらほらあったので、それも無意識に影響していたのかもしれないです。でも曲のデモを聴くまでは、こういう発想はなかったんですよ。
――こういった歌詞の世界感や曲調は、東山さん自身でアイデアを?
はい。曲のイメージをスタッフさんに伝えて、デモを制作していただきました。数曲ずつレコーディングと曲決めを繰り返しながら作っていった中で、この曲は制作の後半にいただいた曲でした。どれも個性が突き抜けた曲にしたかったので、この曲はどういう方向で個性を伸ばそうか考えていて、それで「ロボの方向性なら今までなかったし、ステージングも楽しいものになりそうだ」と思って。
――ロボもそうですけど、「青空ダイアリー」にはセリフがあったり、声優さんらしいキャラクター性を発揮されている楽曲が多数ありますね。中でも「さよならモラトリアム」は、子供からお姉さん、イケボまで、いろいろな声が出てくるハイテンションの曲になりましたね。
一番個性が突き抜けた曲です。アルバム制作の最後に録った曲で、今回は新曲が10曲もあるので、「どうせならやり切っちゃいましょう!」みたいな感じで曲を作っていただきました。作詞作曲編曲の山田悠介さんは、1stアルバム『Rainbow』のリード曲「君と僕のシンフォニー」やシングル「灯火のまにまに」のカップリング曲「ネバギバ音頭」を作ってくださった方です。今回も山田さんに作っていただきたいと思っていたところ、こういった曲を作っていただきました。最初は「さすがにやりすぎかな(笑)?」と思って、一旦脇に置いてあったんですけど、何度も聴いているうちにどんどん気になっていって、「やっぱりこれに決めよう」と、最後に決まったんです。
――いろいろな声が出てきますが、何人くらいのキャラクターをイメージして歌ったのですか?
最初は“女神”が出てきて、その女神から命題を投げかけられた“子供”が出てきて、その子供に“ザマス眼鏡の先生”が教えるというところがあったり、子供と先生のかけ合いになるところがあったり、後半には“ロックっぽいイメージの声”が出てきたり、“ヒーローソングゾーン”があったりします。山田さんの想定はうかがっていないので分かりませんが、私はそんなイメージで歌っています。
――レコーディングは、どんな雰囲気でしたか?
大笑いしながら録りました(笑)。やりたいようにやらせていただいたので、すごく楽しかったです。ただコール&レスポンスのガヤを6人分くらい1人で録ったので、単純に時間がかかって大変でした。でもその分、にぎやかな雰囲気が出せたと思います。
あと、聴いてくださる皆さんをミスリードしたくて、イントロはゴシック感のあるワルツ調にして、子供の<こりゃ難題>という声からガラッと雰囲気が変わります。このミスリードは大切にしたかったので、山田さんとは何往復かやりとりをさせていただいて完成形に至りました。曲調はハイテンションで目まぐるしいですけど、歌詞は、モラトリアム期をどう過ごすかの葛藤を歌っていて、いいことも言っているのでじっくり読んで欲しいです。