音楽は一生手放したくない
――リード曲の「ここにいること」は、大切な相手への気持ちを歌っていて。1番と2番で時間軸が違っていている感じだなと思いました。
まさしくそういう感じです。私は中学1年生からライブ活動を始めたのですが、今こうしてプロの方たちに囲まれてライブをやる前は、ずっと母がサポートしてくれていたんです。最初の頃はカバーを歌っていて、その時の伴奏をはじめ、ライブをやるようになってから遠方に行くときの送り迎えなど、いろいろなところでお世話になっていました。
そこから、スタッフさんやミュージシャンの方が関わってくださるようになる境目のライブがあって。この日を境にして次回からは新体制になるというライブの日は、経験することはなかなか無いことだと思ったし、それまでお世話になった母への感謝も伝えたかったし。それで母への感謝も表しつつ、新体制になって以降は自分で頑張るという意思表明のライブにしたいと思って、その日のためにサプライズで作ったのがこの曲のきっかけです。
――お母さんにプレゼントするような気持ちで?
そんな気持ちでした。でも、なかなか上手く書けなくてライブ当日まで歌詞を書いていて、完成したのが本番直前だったんです。それでもうやるしかないと思って歌ったのですが、母はすごく喜んでくれました。もともと涙もろい人ですけど、ハンカチで涙を拭いながら聴いてくれていました。その日のお客さんは、ずっと近くで応援してくれてきた人たちが多かったので、私にとってそういう日であることを理解した上で聴いてくれていたので、とても温かい雰囲気で見守ってくれる感じでしたね。
――自分がここにいるのは、そういう支えてくれる人がいるからなんだよと歌っていて、メジャーデビューにはぴったりの曲ですね。今回収録しているのは、そのときと変わらず?
編曲していただいているので、コードとか変わった部分は少しありますけど、ほぼ同じです。歌詞もそのままなので、聴いてくださる方は、恋人や友人などみなさんの身の回りの大切な人のことに置き換えて、そういう相手への感謝や自分への励ましだと思って聴いていただけたら嬉しいです。
――また「夢物語」では夢を叶える強さを歌っていますが、シンガーソングライターになることは小さい頃からの夢だったんですよね。
家族が音楽好きで応援してくれたというのもありますが、最初は単に歌を褒めてもらえたことが嬉しかったんです。それまで私は得意なものがなくて、絵は下手だし、しゃべるのも苦手だし、友だちも多くないし。唯一歌を褒めてもらえたことが、自分の自信になりました。小さい頃の夢は自由で、ウルトラマンになりたいとかプリキュアになりたい、サッカー選手、野球選手、何でも自由です。私もそういう感覚で、歌手になりたいと思うようになり、その夢をそのまま持ち続けて今に至っています。
――中高生になると「そんな夢物語ばかり言ってないで現実を見ろ」と、言われるようになってしまいますよね。
身内も最初は応援してくれましたけど、ある程度の年齢になってからは、応援はしてくれるけど応援の仕方が変わったと言うか。「今はいいけど、大人になって芽が出なかった時のことも考えておいたほうがいい」と言われました。それは娘の将来を思ってのことと分かっているのですが、あえて現実味のある厳しい話をされることもあって。でも、それで捨てられるほど生半可な気持ちでもなかったし。
自分は音楽が好きだし応援してくれるみなさんに会うのも嬉しいし、ライブでご一緒するミュージシャンの方とお話をするのも楽しかった。音楽によって自分が変われたと思うことがたくさんあったので、どんな形でも音楽は一生手放したくないものだと思いました。
――音楽で変われたというのは、どういう部分ですか?
自分が今の自分になれたのは、すべて音楽のおかげだと思っています。もともとスペックが高い人はいると思いますが、自分はまったくそうではなくて、特別頭がいいわけでもないし、何か頑張れることに長けているわけでもない。楽しいことじゃないと嫌だし、向かうものがないと頑張れない。そんな自分にとっての楽しいことや向かうべきものが音楽でした。それに根本は人見知りなので、音楽活動をしていなかったら、こんなに人とお話できるようにはならなかったと思います。