奥華子「全てが繋がりを持って生まれたこと」フルマラソン挑戦から得たもの
INTERVIEW

奥華子「全てが繋がりを持って生まれたこと」フルマラソン挑戦から得たもの


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年12月17日

読了時間:約10分

好きになった人の幸せを願える自分でいたい

――「クリスマスの夜」の制作はいつ頃から始めたのでしょうか?

奥華子 最初はハッピーなクリスマスソングを作ろうと思い制作を始めたのですが、気づいたら切ない歌が生まれていて。「やっぱし、そっちへいっちゃうんだ」と自分でも感じてしまいました(笑)。

――最初は、幸せなクリスマスソングを作ろうとしていたわけですね。

 そうなんですよ。幸せなクリスマスソングを作ろうとしていたのに、気がついたら切ない歌になっていて…そこは自分でも理由がわからないんですけど(笑)。それに、あくまでも個人的な意見ですが、みんなクリスマスソングにハッピーな曲は求めていないかなとも思っていて。実際、クリスマスソングの定番曲って、切ない歌が多いじゃないですか。

――確かにそうかもしれません。今回は、心の中でどの様に物語を作り上げていたのですか。

 私、クリスマスって一年の中でも一番好きな時期です。この季節は、街もみんなの心も色づいて、「クリスマスまでには恋人を作るぞ」と、一つの目標を掲げるような日にもなるじゃないですか。誰かにプレゼントをあげたくなったり、誰かのことを思ったり。たとえ別れた人であろうと、一度は好き同士だったわけでその相手のことを思いやったり。特にクリスマスの日は心が優しくなれる日だと、私は思います。

――この曲に登場する主人公の男性も、別れた元恋人のことを「たとえ今は別の人と幸せを描いていようとも、君の幸せを願ってる」と言えるほど、暖かい気持ちでかつての恋人のことを思い返していますね。

 そこは、ちょっと強がっているところもあります(笑)。主人公として登場する男性は、別れた女性のことがいまだに好きなんです。だからこそ、好きになった女性の幸せを願える自分でいたいなと思いたい。そんな、男性の願望を歌にしています。

――好きな気持ちが残っていたら、なかなか相手の幸せを願うのは難しいですからね。

 なれないですよね。だからこそ、せめてクリスマスの日くらいは、そういう自分でいたい。歌詞に<今日は願うよ>と言葉を記したのも、「クリスマスが明けた翌日からは、そう思う自信はない」自分になるのをわかっている。だからこそ、ちょっと強がる姿勢もそこに含めています。しかも、強がる=切なさになるのかなとも思いました。

――アレンジも素敵だなと感じました。

 すごくキラキラとしたアレンジといいますか、今回初めて、アレンジャーの小林俊太郎さんにお願いしました。小林さんは、私が声優の竹達彩奈さんに楽曲提供をした「セピア色」や「HIKARI」のアレンジをしてくださっていた方です。そのアレンジがすごく素敵で、いつか自分の曲でもアレンジをお願いしたいなと思っていました。そういう繋がりから、今回やっとアレンジが実現しました。

 小林さんはキーボディストでもあって。「クリスマスの夜」は私のコード感ではなく、小林さんのコード感で作って頂きました。普段の自分では弾くことのない響きやコード進行を持っているのもすごく新鮮だったし、それもあって、今までにはないサウンドになったなとも思っています。

――それでも、聴いていると奥華子サウンドとして響いてきますからね。

 そこが不思議ですよね。私らしさを取り払い、全部を変えてしまうことも出来たと思いますけど。奥華子らしさも生かしつつ、新鮮味を持った面もスパイスとして加えて下さったところが、すごく良かったなと思います。その絶妙なバランス感が良いですよね。

――素敵な出会いになりましたね。

 何事も出会いだなと感じます。今までの活動を振り返っても、中には一度だけの出会いで終わる方もいれば、継続して繋がっている人もいます。もちろん、一度離れて、また再会してという方だっているように、いろんな出会いを重ねながらも、とにかく演り続けてきたことが大きかったのかなと思います。

 今回だって、竹達さんに楽曲提供をしていなければ、小林さんと出会うこともなかったし。その小林さんとご一緒することも無かったことかも知れない。そう考えたら、すべてが繋がりを持って生まれたことだし、これからも、その繋がりから何かが生まれるかもしれません。

――そこが、歌い続けていく人の強みだなと思います。

 もし歌を辞めてしまっていたら、ここまでの出会いを得ることはありませんでしたからね。こうやって続けられていることにも感謝だし、続けていくことに、私は価値観を見いだしたいなとも思っています。

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