諦めない――、両腕の無い演奏家 ジョナタ・バストスの揺るがない思い
INTERVIEW

諦めない――、両腕の無い演奏家 ジョナタ・バストスの揺るがない思い


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年11月22日

読了時間:約7分

中古楽器の質に驚いた日本の楽器店

ジョナタ・バストス

――昨年に続き、今年はどのようなパフォーマンスを見せられると思いますか。

 昨年とはまた違ったメンバーと演奏することによって、新たな魅せ方や聴かせ方が出来ると思っています。いつもパフォーマンスは違いますし、個性のあるものです。コンテキスト(文脈)というものがすごく大切だと感じています。今回はこの『ParaFes 2018~UNLOCK YOURSELF~ 』のために新しいギターを頂きました。僕がエンドース契約をしている「Tagima guitar」というブラジルのメーカーのもので、日系ブラジル人の方が立ち上げられたメーカーなんですよ。それを使用して音楽を届けたいと思っています。

――日本との繋がりもあるギターなんですね。それも含めてどんなパフォーマンスになるのか楽しみです。そういえば先日、日本の楽器店にも行ったみたいですが、ブラジルと比べるといかがでした?

 日本の楽器店には、ブラジルでは手に入りにくい楽器や、高級な楽器も沢山展示されていて、しかもすぐに試奏出来るというのは凄かったです。特に驚いたのが中古品です。というのも、ブラジルでは中古という文化がそんなに根付いていないんです。しかも日本は中古でも新品のように箱にも入っていて、質も良いし、値段も安いというのが印象的なことでした。

――欲しい楽器はありましたか。

 もう沢山ありすぎて、可能ならばお店ごと全部を買いたいぐらいでした。今回はいっぱい買い物をしてしまったので次回頑張ります(笑)。

――さて、ピアノもギターも素晴らしい演奏力のジョナタさんですが、音楽で新たに挑戦してみたいことはありますか。

 ありがとうございます。最近はやっていなかったんですけど、またハーモニカをやりたいなと思っています。将来的にはブルースなどをギターで弾きながら、ハーモニカを同時に演奏出来たらいいなと思っています。ハーモニカは基礎的なことはやっていましたけど、これは僕の中で大きなチャレンジです。ブルースをしっかりと弾けるミュージシャンになりたいです。

――楽しみにしています。ジョナタさんはエレキギターを演奏しているイメージが強いのですが、アコースティックギターも演奏されますか。

 はい、演奏します。ギターを始めた時も最初はアコースティックギターでしたし、演奏力を鍛えるためにもすごく良いんです。でも、自分はロックが好きなのでエレキギターの方をメインに弾くことが多いです。

――確かに、弦のテンションも強いのでアコギで上手く弾けるようになると、エレキの演奏に良い効果を与えてくれますよね。

 はい。それもあって弾くのが難しいんですけど、良いギターを弾くためにはアコギも上手く弾けるようになることが、すごく大事だと感じています。

今まで生きてきて諦めたことはない

ジョナタ・バストス

――23日はパラスポーツの選手たちも同席されますが、どのような気持ちで音楽とスポーツを融合させたいと思っていますか。

 音楽もスポーツも目的は同じだと思っています。僕は皆さんへの動機づけやモチベーションアップのためであって、自分のヒストリーをシェアすることによってモチベーションをアップさせます。アスリートもきっと同じ気持ちで臨んでいると思います。ですので、別物とは考えていませんし、ミュージシャンもアスリートも同じ言語を話していると思います。

――お互いの熱量を共有しているという感覚もあって。

 もちろんです。でもそれはアスリートやミュージシャンだけではなく、楽屋を準備してくれる方や、食事を用意してくれる方など、関わってくれる全ての方たちからエネルギーをもらっていますし、そういう方たちもいて全てが成り立っていると思っています。

 そして、去年来てくださったお客様に感謝します。今年も『ParaFes』が開催されることは皆さんがチケットを購入し、足を運んでくれたのが大きな要因だと思います。今年は昨年よりもっとグレードアップしたイベントになると思いますし、『ParaFes』から学ぶことも沢山あります。きっと皆さんの心に残るイベントとなると思います。

――最後にジョナタさんが常に掲げているモットーはありますか。

 「諦めない」ということです。今まで生きてきて、諦めたことはありませんでしたし、きっとこれからも諦めることはないはずですから。

(おわり)

 ◆ジョナタ・バストス 3歳のときに地元教会で歌い始め、6歳から祖父にキーボードを習う。12歳頃からリオデジャネイロ内各地で演奏や講演活動。その頃に、母親のギターで遊び始めたことがきっかけで、ギタリストを目指すようになる。ギターをアンプとつないで足での演奏を可能にした「ギターペダル」を使って弦楽器を演奏。ブラジル全土をまわりながら演奏スキルを磨き、2010年にはソロ奏者としてギターリフを習得。国内トップアーティスらと共演を果たし、2016年には英テレビ局が制作したパラリンピックのプロモーションビデオにピアニストとして抜てき。YouTubeで800万回以上再生され、リオパラリンピック閉会式でパフォーマンス。ピアノ、ギター、さらにはドラムまでを演奏する。

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