矢野聖人、ギターとの不思議な関係:「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」
INTERVIEW

矢野聖人、ギターとの不思議な関係:「ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。」


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:18年11月17日

読了時間:約14分

この歳で叶えたかった目標が一つ叶った。でも思いは意外と冷静に

――今作で矢野さんは、映画としては初主演となりましたが、オファーを受けられた際にはどんな気持ちだったのでしょうか?

 そうですね…まあ20代のうちに叶えておきたいことの一つ、ドラマの主演をやって、舞台の主演をやって、あと映画の主演をやるという、20代のうちにやりたかったことの一つだったので、それが実現できたことは良かったと思います。

 ただ、“わーっ!”とぬか喜びだけじゃなくて、ちゃんと現実的な感じで受け止めていました。それこそドラマで最初に主演をやりますよ、と言われたときの方が“わーっ!”という感じでしたけど。自分の中では、決めごとみたいな感じの目標だったこともありますし…。

――どちらかというと冷静に?

 そうですね。でも最初はオファー自体が“本当に間違っていないかな?”と(笑)

――どういうことですか??

 今回の映画のプロデューサーさんが、僕が以前ドラマ『民王』(テレビ朝日系)の番外編で、本当にネット限定配信のドラマだったんですけど、そこで少しお話をしたくらいの面識しかなかったので、“本当に僕であっているのかな?”って(笑)。ガッツリお話させていただいたというよりは、スケジュールもその作品はすごく厳しかったので、そんな状況でしか面識が無いのに、振ってくださったというのはちょっと不思議で。

――そういうことでしたか。一方、初の映画出演ということでおうかがいしたいのですが、逆にこれまで脇役をやられていたときには、主役に憧れる気持ちも強かったのでしょうか? 役者の方それぞれ趣向もあって、脇役を敢えて好む”バイプレーヤー”とよばれる方なども近年は注目を浴びておられますが。

 役者を始めた当時、19~21歳くらいの頃は、それこそ今の歳くらいには“主演くらいしかやらない”くらい思っていました(笑)。でも役者をやってきて、今の歳になってちゃんと自分がやってきたものを踏まえて考えると、今はそれほど主演、主演という感じでもないんです。だから脇役を演じる楽しみもあるし、そこでこそ僕が生きると思って使ってくださっている方もいらっしゃると思うので、そんなところは自分でも理解して仕事をするようにはなりました。

――役者の面白さを積み上げていかれている感じですね。今回矢野さんが演じられた鯨井太一という登場人物ですが、資料的にはそれほど詳しいバックグラウンドが書かれてはいないですが、少し印象的なキャラクターでもありますね。クジラや仕事に関しての知識、情熱は人一倍だけど、どこか人とのコミュニケーションがうまくできないことを悩んでいるような感じもあります。

 実は最初の顔合わせ、本読みのときに、僕は作品の太一とは違うイメージのものを用意していたんです。それを提示したときにプロデューサーさんのほうから、”もうちょっと明るいけど…”みたいな感じの指示を受け、さらに監督さんからは“天才っぽさみたいなところを”というアドバイスを受けたんです。

 ただ僕も監督もそうですけど、人とは違うというのを、明るい感じで出すとなると、一歩間違えたら病気っぽさが出てしまうし、出さないは出さないで、ただの普通に明るい人になる。だからその中間をやるというところを目指したんです。

――劇中では自然に見えますが、それはかなり微妙なキャラクターですね。

 そう、それをやるというのは、僕の中ではかなり難しかったですね。見えかたによっては“そう見えちゃう”、病気と見えるかもしれないなというのが、すごく怖い部分でもあるので、それをそうならないように。あと人とコミュニケーションをとるというのが苦手だけど、でも仲がいい人とは普通に喋ったりするようなキャラクター、そしてただ本当にクジラが大好きで、まっすぐで、という、そんなキャラクターを描くことを意識しました。

――イメージ的に、さかなクンっぽい雰囲気を感じました(笑)。

 (笑)。それは確かに! オマージュしているわけはないですけど…でも言われると、確かに近いかもしれません。太一の声は、実際に自分の声だと明るさが出ないなと思ったのでトーンを上げているんです。また雰囲気がフワフワしている感じなんかも、監督から言われたので、その感情を必然的に出して、天才っぽさを出すと、まさしくさかなクンっぽいというのは(笑)。あの方も魚の知識はすごいし、魚を愛する気持ちもあるし、確かに近いところもあると思います。

――すごい偶然というか(笑)。また、太一には大きな夢があり、それを劇中で話すところもありました。一方で矢野さんの夢はいかがでしょう?

 (笑)。夢かあ…いろいろありますけど…まあ先のことでいうと、映画を撮ってみたいな、という思いがあります。

――作る側、ということですか?どんな映画を撮ってみたいというイメージはあるのでしょうか?

 いや、具体的なイメージや、そういうものはまだないです。でも以前は自分で実際、短編のシナリオを書いてみたり、2~3年前に一回撮ってみたりとかしているんです。だから今は漠然とですけど、いつかはチャレンジしてみたいですね。

矢野聖人

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