鯨と向き合うことを様々な視点で感じた撮影
――今回の作品は和歌山県での撮影で、たとえば普段のドラマのロケからすると相当に特殊で苦労もあったと思いますが…。
撮影に入る1カ月弱ほど前に、クジラと触れ合うための練習を3日間、行いに和歌山に行きました。
――3日? そんなに短い時間でできたのでしょうか? イルカやシャチなどの調教的なお仕事は、動物との信頼関係を作ることなんかにすごく難しいところがあるとか、そういった話をうかがったことがあります。
そうなんです、僕も不安でした。結構本当にあるんですよね、そういった信頼関係って。でも2日目でできたんじゃないかな(笑)。
――2日目で?(笑)それは…意外に才能があるんじゃないか? くらいに自分でも思われたとか(笑)。
いや、別に才能は感じなかったですけど(笑)。でも今おっしゃったように、確かにこっちに自信がないと見られると、向こうも言うことを聞いてくれないんです。それが1日目にわかったので、2日目にできない、わからないと思っても、相手の子の目を見てずっと離さないでいると、本当に言うことを聴いてくれて。
そうすると自分でエサをあげるやり方もわかってきました。そして、そのまま3日目でそれまでの仕上げみたいなこともできたし、劇中でのショーをやるシーンがあるんですけど、その一通りのプログラムみたいな動きを、ゆっくりですけどやってみて、それがわりとうまく決まりました。だから“あ、これだったら大丈夫かな”と思いました。
ただ、それから撮影までは時間があったので、その間は心配でしたけど、忘れちゃったり、別の現場だったり、信頼関係、感覚的な部分というか。
――3日で…驚異的な習得能力ですね。
でも撮影が始まってから、実際に撮影で向き合ったクジラが変わったりしたんですけどね…だけど逆に、それがよかったかもしれません。そのときに“一から信頼関係を作ろう”という気持ちになったので、一度できたことの復習にもなったし。
――ちなみに撮影は、あのショーのシーンはほぼ一発撮りで、本当に演目をやっている感じでおこなわれたのでしょうか?
そうですね。ぶっ続けでやったところもありました。難しいところもあるんですけど、引きでショーをやるところはカメラを止められないので、わりと頭から終わりまでぶっ続けでやっていました。それにカメラが回っていないところでも、僕らがやることというのは、本当に現地の飼育委員さんみたいな動きはしていましたし。
――それはみなさん、大変な苦労だったと思います。特に体当たりのチャレンジというか、武田さんとかはクジラの上に乗ってサーフィンとか…。
いや、すごいですよね。しかも武田さんは、カナヅチって…(笑)。
――カナヅチ!?(笑)。ある意味相当な覚悟が必要ですよね。
確か“泳げない”と言われていて…でもできていたので、身体能力がすごいんだなと。身体能力もそうだし、やっぱり動物とコミュニケーションをとるのがうまいと思いました。ペットを飼われているとおっしゃっていたんですけど。
――それは大きいですね。
僕も実家で猫を飼っていたんですけど、そういうものも、何か今回の撮影に生きるものがあったかな、と。