頂上は観なくてもいい気がする
――「The Way」という曲もありますが、こういう音楽の道は小西さんにとって、どんな道ですか? 険しい道なのか、それとも楽しい遊歩道なのか。
そうですねぇ…苦しい上り坂があるから楽しい、みたいな感じでしょうか。楽しいだけじゃなくて、作る過程の苦しさみたいなものもあるから、TD(トラックダウン)もマスタリングも終わって、完成したものをスタジオで聴いたときに、「うわ~頑張って良かった~!」みたいな喜びと達成感が感じられるんだと思います。もちろん制作過程で楽しいと感じることも多くて、それだけにちょっと行き詰まったときには、「う~」ってなるんだろうなって思いますね。
――楽しいピクニックではなく、険しさもある登山のような感じなんですね。では、今後音楽活動で目指す頂上は?
頂上は観なくてもいい気がします。ここが頂上だと思っても、辿り着いたら、すぐもっと違う頂上を探す気がするし。頂上が見えたと思ったら、もういいやってなっちゃうかもしれない。だから、どんなにいい景色が見えても、いつでも次を見ていたいというか。
――なるほど。最後に収録の「またここで逢える」の歌詞に<挑戦と“ありがとう”を忘れないなら>というフレーズがありますが、この言葉が今回のアルバム制作の気持ちを絶妙に言い表しているような気がしました。ここに込められた気持ちを教えてください。
これは、ストレートなことも言いたいけど韻も踏んでみたいと思って(笑)。歌詞の頭に「透明」という言葉が出てきているんですけど、それに対して韻を踏む言葉として「挑戦」が出てきました。でも挑戦だけだとアグレッシブな感じがして、曲調と合わなくなると思って。それで、何かを加えたいと思ったときに、出てきたのが「ありがとう」という言葉です。
どんな仕事でも人としても、「ありがとう」という感謝の気持ちが全てのような気がしているから、それは何歳になってもどれだけ経験を積んでも忘れたくないし。そういう気持ちさえあれば、いろんな人との出会いにもいい機会にも、すてきな未来の自分にも巡り会えるんじゃないかなって。聴いた人にも、そういう風に感じてもらえたらいいなと思って、ストレートに言葉を選んだらそうなったという感じです。
――きっと、今作に携わった人や聴いてくれた人への気持ちでもあるんでしょうね。
はい。なので、これを最後に入れることにしました。
――今後も音楽活動はコンスタントに続けていく?
そう思っています。
――今、目指しているところや目標はありますか?
より多くの方の心に届く、曲を作りたいというのはあります。昨年末に、「君とクリスマス」「クリスマスプレゼント」という2曲を亀田誠治さんのプロデュースで、配信限定でリリースさせて頂いて。今回はKREVAさんがサウンドプロデュースなので、必然的にラップの作品になりましたけど、なかにはラップではない曲も収録していますし。私自身でも、自分の可能性や伸びしろがどれ程あるか分かっていないので、ラップに限らずもっといろんな方とコラボさせていただいて、いろんなことを発見していけたら面白いだろうなと思っています。
――次にどんな方とコラボをするのか、どんな部分を引き出してもらえるのか、何が生まれるのか楽しみですね。
はい!
――アルバムを聴いた人は、こんどはライブを観てみたいと思うわけですが、人前で披露する予定は?
いずれはやりたいですけど、すぐさまライブに直結という感じではなくて…。あまりにも私が観に行くライブが素晴らしいので、そこまでいかなくても、お客さんにお金と時間を割いて頂いて楽しませられるレベルになったら、やってみたいという感じです。アワアワしながら、何の準備もなく、「とりあえずライブをやりましょう!」という感じでできるタイプの人間ではないので。スタッフのみなさんのアイデアとお力をお借りして、しっかり準備ができた段階でやりたいと思っています。
――どういうところでやりたいですか?
暗いところで(笑)。私は、初めてのライブが2016年に開催された『elements night ~sunday night session~』で、会場が日比谷野外音楽堂だったんです。私の出番はまだ明るい時間帯だったから、ステージに出た瞬間、お客さんの顔がブワ~ッと見えて。それですごく緊張してしまって、マイクを持つ手が震えた経験があったんです。だから最初はすごく暗いところから始めて、徐々に慣らしていけたらと思います。
(おわり)