更なる芸術性求めて、LEO 新作は大学進学を経た出会いの集大成
INTERVIEW

更なる芸術性求めて、LEO 新作は大学進学を経た出会いの集大成


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年09月23日

読了時間:約11分

「この人についていきたい」と思ってもらえる人に

LEO(撮影=冨田味我)

——他に今、音楽的な興味がある事はありますか。

 先日ブルーノ・マーズの来日公演に行ってきました。楽しかったですね。エンターテイナーという感じでした。あと最近はミニマルミュージックを個人的な趣味でよく聴いています。スティーヴ・ライヒの曲で「ナゴヤ・マリンバ」というマリンバ2台で演奏している曲があって。こういう曲をお箏でやったら面白いなと思いました。その曲は日本の音階を使ったものなんですけど、それを使わなくてもミニマル音楽は箏と相性がよいのではと感じます。親しみやすいし、いち楽器として聴いてもらえるから、ミニマルをやってみるのは面白いのかもしれません。

 ただ難しいのはミニマルミュージックだけでコンサートをやったら、単調になってしまうんじゃないかという事なんです。なので、どういう形でやるのか…例えば音楽以外のアートとのコラボレーションをするのもアリなのかなと。藝大の美術の方々とはキャンパスが道を挟んで分かれているので交流を持つ機会は少ないんですけど、音楽以外の色々な人と一緒にやりたいという気持ちはあります。

——海外だとアートスクール出身のバンドとかも結構いますが、藝大でもユニット結成したりすることは多いのでしょうか。

 邦楽の人でそういう活動をしている人はあまりいません。西洋楽器の人を見習って自分から行動を起こしていかなければいけないなと。学生でいる事は武器だと思うんですよ。色々な事ができるので。それを武器にしたいですね。藝大の学生は無料で企画して演奏会ができるので。芸大の中でも色々企画して交流できたらと思います。

——アメリカでは「ブルーノ・マーズは黒人音楽を搾取している」という様な意見が出たそうですが、これについてどう思われますか。

 高校時代は僕も「外人さんなのによく頑張っているわね」と偉い先生に言われて相手にされなかった事もありました。日本人じゃないから遊び感覚だと思われていたのかもしれません。でも頑張っているうちにその先生にも認めてもらえる様になりました。それに、お箏の世界って女性が多いんですよ。それにハーフなので僕は結構特殊な立ち位置です。だから最初は「LEOくんは違う」という言われ方をよくしていたんです。

 でも今はクラシックの世界でもアジア人の方が活躍している人が多いんですよ。ピアニストやヴァイオリニストとかも。そういうところを見ても音楽って国境がないと思うんです。ニューヨークやロシアに行った時もすごく反応が良かったです。お箏を素直な気持ちで楽器として聴いてもらえたと思います。いつかは色々な文化が集まっているニューヨークで改めて自分を試したいなと考えています。

——先日おこなわれたワールドカップでは、日本もベスト16に進出しました。色んなフィールドで日本人も活躍していますよね。

 見てましたよ。決勝トーナメントでも唯一のアジアのチームでしたし、日本以外のアジアの国の人も結構応援していたみたいです。そういうのを見ていると、現代音楽でもガムラン(インドネシアの楽器)などの色々な民族楽器が取り上げられる事を思い出します。グローバル化している中で、民族楽器が西洋と同じ土俵で音楽ができるようになればいいなと思います。

 僕はファッションも好きなんです。以前からコム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトは有名ですけど、最近もダブレットというブランドを手掛ける井野将之さんが『LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ』という賞のグランプリを獲得していたり。日本の味が海外から見ると面白くて、評価されているんです。そうやって活躍する日本人を見るととても参考になります。

——LEOさんにとって、ファッションの面白さとはどこにありますか。

 音楽と同じで、デザイナーの個性や伝えたいものがわかりますし、色々な文化をミックスする事ができるわけじゃないですか。西洋とアジアが混ざるみたいに、服も違うブランドのものを選んで着たりする事でその人の個性が生まれる。それが僕としてはすごい面白いんです。自己表現の手段として音楽と通じるものがあると思います。

 ラッパーのA$AP Rockyやカニエ・ウエストの様に音楽をベースにしている人がアイコンになって、全ての分野の人に影響力を持つのはいいですよね。色々な活動をするに当たって「この人についていきたい」と思ってもらえる人にならないといけないなと感じます。
 今まで僕は友達と本音で語る事ができなかったんですよ。『情熱大陸』で密着してくれたディレクターさんから難しい質問をされて本音で答えた時に、自分が人間として全然足りないなと感じたんです。勇気を出して話さなきゃいけないな、と。だから最近は何を考えて音楽をやっているのか話し合いながら、心で繋がれる様に努めています。

(おわり)

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