SNSではなく音楽で発信、桑原あい ジェンダーを超えた自分の音
INTERVIEW

SNSではなく音楽で発信、桑原あい ジェンダーを超えた自分の音


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年08月25日

読了時間:約15分

ミュージシャン同士の愛の形

桑原あい(撮影=冨田味我)

――前回お話を伺った時より、日焼けされたように見えます。夏休みはあったんですか?

 はい。沖縄に旅行に行って来たんですよ。泳いだし、釣りもやったり色々。美白とかにも興味はないです(笑)。トローリング(船を巡行させながらの釣り)もしましたよ。本当はマグロを釣りたかったんですけど、カツオを釣りました。釣りにハマったのはここ1年くらいですけど、もともと海とか山は大好き。音楽がないところに行きたくて、海とか山とか一切電子的なものがない場所が落ち着くんですよね。ずっと音楽をやっていると耳も過敏になってきます。続けていく以上休ませないと、復活できなくて。私は聴いている倍以上休ませないと駄目なタイプで、集中力がなくなってしまうんです。休みの日はテレビも点けず、音楽も聴かないで本を読んだり散歩したり。耳を使わないという事を昔から無意識的にしているんだと思います。

――そういう時、音楽の事は考えたりしないんですか。

 全く考えないです。浮かんでもこない。「船長さんすげー!」とかずっと言ってました(笑)。そこからぼーっとしていると創作する気になってきます。海の曲とかも書いていたので、海に行った時は感動しましたね。取り入れようと思わなくても、忘れない光景は音楽にも活きてしまうので「これを取り入れよう」とかはあまり考えないです。逆に「取り入れよう」と思っていた時期は曲が書けなくなってしまいました。今は自分が自然でいられるものこそを大事にしようと思っています。だからそういう生活をしているんですよ。無理に練習もしないです。集中が途切れたらやめるし、続く時はずっと練習していますから。無理やり出したものは、やっぱり無理やり感が出てしまう。

――今はこれからのライブモードに切り替わっている?

 全然。特にないです。ライブが決まっているものはあるので、日にちが近づいてくればそういう気持ちになっていくんだと思います。今から意気込むとかはなくて、9月にスティーヴ・ガッド、ウィル・リーとのツアーがあるのでそのための新曲を書かなきゃと思って心をゼロにしている感じですね。

――桑原さんは本当に色々な人と共演していますね。新しく演奏する人もいれば、段々と演奏する機会がなくなっていく人もいると思うのですが、それについて寂しく思ったりしますか。

 致し方ないと思います。寂しいと思っていたら今もやれていないんじゃないですか。私は音楽は人だと思っています。やっぱり私が目指している音楽像がその人の目指しているものと別だったり、ベクトルが変わっていく事もあるんですよ。すると、その人のいいところは絶対あるとわかっても、彼氏彼女みたいに「どうしてわかってくれないの?」という感じになりがち。

 でも、それで相手を否定するのは間違いだと思うんです。だったら、離れた方がいいというのがミュージシャン同士の愛の形なんじゃないかなと。相手の音楽にどうこう言う事ではないし、その人の個性を否定するくらいだったら一緒にやらない方がいい。それは音楽に申し訳ないと思います。そこまで考えて離れれば、寂しいと思う事もない様な気がしますし。

(おわり)

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事