永遠に使われるテーマソングを、春畑道哉 過去と現在の想い綴る
INTERVIEW

永遠に使われるテーマソングを、春畑道哉 過去と現在の想い綴る


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年08月22日

読了時間:約14分

テーマは「“変わるもの”と“変わらないもの”」

――今回の25周年バージョンの聴き所をお聞きしたいのですが、ギターの弾き方としてのポイントは?

 オリジナルに忠実に弾こうと思っていました。歌い回し方というか、ビブラートのかけ方だったりスライドであったり、そういうことは今一番自然に出てくる感じで弾いています。メロディに関しては崩さないほうがいいと最初に決めたので、アドリブをいれたりメロディがオリジナルは延びているのに切っちゃったり、アームダウンしちゃったりしないようにしようと思いました。やっぱりリアレンジというのはちょっとチャレンジし過ぎると「オリジナルのほうが良かったよ」という声も出るじゃないですか?

――それはよく聞きますね。当時の思い出補正も入っていると思うのですが。

 そうですよね。僕も色んなアーティストのリアレンジを聴いて「こうしちゃったのか…」という時もあるし。僕が好きなギタリストの曲がこういう風に変わったのかというのももちろんあって。そう捉えられるのは「J’S THEME(Jのテーマ)」にとって良くないなというのと、Jリーグさんから「“変わるもの”と“変わらないもの”」というテーマを頂いたので、どこを変えるのか、どこを残すのか、というのを凄く吟味しました。

――「変わるもの」というところでアレンジ、オケを変えようと思ったわけですね。

 そうですね。あと今回リアレンジするにあたって、試合を観に行かせて頂いたときに、試合前にスタジアムの周りの広場で小さな子達がサッカーボールを蹴ってお父さんや友達と遊んでいるのを見て、凄く良いなと思いまして。こんな風に1日を家族で過ごしているんだと知って。そして、これからその子供達がよりサッカーを好きになって育っていくんだなということを感じて、ポジティブなイメージでリアレンジしました。

――25年前のプレイを今の耳で聴いて改めて感じたことはありますか?

 熱いなと思います。今これを同じ風に弾こうと思ったらここまでは大げさなビブラートはかけないなと。今は曲全体を見てどうプレイしようと考えていくんですが、でも熱いからこそ伝わるものもあるんだなと昔のプレイを聴いて思ったりしました。当時はアームでビブラートというのはあまりしなかったですね。大げさなアームプレイはしてましたけど。

 そういえば一時期ですけど、フルピッキングでひとつも音をミスりたくないというのがありました。「何音目が小さくて鳴ってないから弾き直す」というところが昔はあったんです。それが許せない、みたいな(笑)。でも最近はそれはなくなりました。むしろスタッフに「ここもう一回弾いた方がいいんじゃないですか?」って言われるくらいになってきて(笑)。「そんなとこ気になる?」って。

――考え方が変わったきっかけはどの様なものだったのでしょうか?

 ギタープレイのみを見ていると全体が見えないということに気付いてからですね。やっぱり全体が見えつつのプレイが重要かなと。

――ところで、今作の初回盤に付属するブックレットにはJリーグの歴史を辿る写真とともに、日本サッカー協会キャプテンで初代Jリーグチェアマンの川淵三郎さん、現Jリーグチェアマンである村井満さんと春畑さんとの鼎談が掲載されています。その時に「J’S THEME(Jのテーマ)」をガットギターで弾かれたとのことですが、アコースティックギター系もよく弾かれるのでしょうか?

 好きですね。アコギもめっちゃ好きでベッドの横にガットギターがあったり、ソファの横にはGibsonのJ-45を置いていて本当によく弾きますね。

――対談でのアコースティックバージョンは、メロディとコードを同時に弾くような、ソロギターと呼ばれる奏法で演奏されたのでしょうか?

 はい。ギター本体にリバーブが搭載されているもので、ポロポロと指弾きで演奏しました。実はJリーグのスタッフのみなさんにもお礼の意味を込めて演奏させて頂いたのですが、そのときは、スチール弦でキーを全音下げの「G」に変えてガンガン弾きました。大勢がいるフロアでジャカジャカ遠くまで聴かせるにはこのキーだなと思って。ガットギターは静かな密室での演奏だったので、オリジナルキーでガットギターでつま弾く感じで良いなと思って。

――川淵さんがその演奏を聴いて涙を流したそうですね。

 Jリーグを立ち上げるまで想像できないくらい大変な事があったでしょうから、その時のことを思い出されたのかと思います。

――音楽はその時に戻してくれる感覚もありますよね。春畑さんにもそういった経験はありますか。

 あります。昔聴いていた曲を聴くと当時やっていたバンドのことなど思い出しますね。

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