INTERVIEW

岡崎紗絵

“音楽ファンタジー作品”から感じた「踏み出す勇気」の大切さ:映画『はじまりの日』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:24年10月15日

読了時間:約8分

 岡崎紗絵が、映画『はじまりの日』(公開中)に出演。音楽プロデューサー矢吹(演・竹中直人)のアシスタントの望月を演じる。ex JAYWALKの中村耕一(男役)とシンガーの遥海(女役)がダブル主演を務める本作。かつて一世を風靡したロックスターと未来の歌姫という、対照的なキャラクターを通じて描かれる、伝説のロッカーの再生と若き歌姫の誕生の物語。国際映画祭受賞監督である日比遊一氏の描く今作は、従来のミュージカル映画とは一線を画す。抒情的な映像から自然に生まれる魂の歌声。希望の光を感じさせるストーリーで、心地よく大人が没頭できる音楽ファンタジー作品となっている。インタビューでは、映画『はじまりの日』の撮影の裏側から、岡崎が勇気を出して一歩踏み出したときのことなど話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

2人の歌声から魂の叫びのような力強さを感じた

岡崎紗絵

――本作を拝見してとても感動しました。岡崎さんは完成した映像を観られて、どんなことを感じましたか。

 成長物語でもあるんですけど、スケールがとてもすごくて、日本でこういったスケールの作品ができるんだと思いました。ロケ地が名古屋だったので私も知っている場所が出てくるのですが、あの場所がこんな風に変わるんだという映像としての驚きもありました。そして、メインで登場する2人は、「男」と「女」ということで役名がないのも新鮮なのですが、2人の関係性、年齢の差を飛び越えて繋がる部分が繊細に描かれていて、とても感動しました。

――特にどのシーンがお気に入りですか。

 どのシーンも印象的なのですが、最後のクライマックスのシーンです。2人の歌声から、まるで魂の叫びのような力強さを感じました。お互いに響き合い、鼓舞し合いながらメッセージを歌に乗せているのを感じました

――岡崎さんが演じるのは、竹中直人さん演じる音楽プロデューサー矢吹のアシスタントの望月ですが、役の印象はいかがでした?

 音楽は好きでよく聴いたりしますけど、ジャンルなど詳しく知っているわけではなかったので、音楽に携わる役を演じることに驚きました

――音楽プロデューサーや、そのお仕事について調べたりされましたか。

 はい、調べました。プロデューサーは音楽や映像など業種が違っても、基本的な役割は変わらないと感じました。全体を支えたり、現場をまとめたり、そういう役回りなんだと改めてプロデューサーのお仕事について知りました。

――岡崎さん自身が誰かにプロデュースされたこともあるかと思うのですが、印象的なプロデュース経験はありますか。

 プロデュースというのかわからないのですが、2012年から2015年までファッション誌『Seventeen』でモデルをやっていました。その時はプロデューサー的な位置にいる方は編集さんになるのですが、その編集さんから、ポージングや表情の作り方など、基本から丁寧に教えていただきました。それこそポージングとか始めた頃は何もわからないし、笑顔も上手く作れなくて...。やってみてもどこか固い感じになってしまうので、当時は「笑顔の練習をしなさい」と言われていました。1から教えていただいたことが強く印象に残っています。

――いい笑顔を作るコツはありますか。

 笑顔の練習として割り箸を加えて口角の筋肉を鍛えたりとか、鏡を見ながらやっていたのが、良かったのかなと思います。

――さて、竹中直人さんとは初共演。印象通りの方でした? それともちょっと意外な一面もありましたか。

 イメージ通りでした(笑)。とても楽しい方で竹中さんがいると現場が明るくなりますし、とても楽しかったです。また、テスト撮影で竹中さんは台本にとらわれないアプローチをされていて、突然、何語かわからない言葉でお話されたりして、現場は常に笑いに包まれていました。先が読めないので、「一体この先どうなるの?」みたいな瞬間もすごく楽しかったです。

――竹中さんのお芝居からどんな学びや発見がありましたか。

 視野がとても広いなと思いました。自分のことばかりじゃなく、対峙する相手との掛け合いをすごく大事にされていた印象でした。例えば、台本にないけど相手の言動に反応されたり、受け答えをしているような感じがありました。竹中さんはそれをとてもナチュラルにされるので、とても勉強になりました。

――岡崎さんが望月を演じるにあたり、意識されていたことはありますか。

 望月は自分の好きなものや、どうしたいかという考えをしっかり持っている人だったので、社長の考えに流されず、イエスマンになりすぎないように、しっかり自立した女性でいることを意識していました。

――望月は自分の意志をしっかり信じていますよね。

 そうなんです。素晴らしいと思いました。自分の意志を貫き、行動に移すその勇気が本当にすごいと思いました。

経験してみたいことは声の仕事

岡崎紗絵

――さて、主演を務める中村耕一さんと遥海さん、お2人の印象はどうでしたか。

 中村さんはすごく物腰が柔らかくて丁寧な方で、静かに佇んでいるといったイメージでした。私がご一緒したときは、歌うシーンがなかったので、生で聴くことができなかったのですが、完成した映像で歌唱シーンを見て、歌うとこんな風になるんだと、お会いしたときとのギャップがすごくて驚きました。表現者というのを目の当たりにしました。

――遥海さんはいかがでした。

 初めて生で歌を聞かせていただいたとき涙が出ました。こんなに歌が上手ければ、望月もプッシュしたくなるよねと思うぐらい、すごいパワーでした。また、遥海さんはすごくピュアで可愛らしくて、中村さんと同じく歌っているときとのギャップがありました。

――お2人の役は難しいですよね。自分自身でもあるような役柄だと感じました。だから役名がないのかと納得しました。

 中村さんは、「半分くらい僕ですね。実話に近いところもあります。」とコメントされていて、演じるというより、自然体でそこにいる感じでした。多くを語らなくても、表情などでそこにいる意味が伝わるものってあるんだなと思いました。

――本作をどんな人に観てもらえたら、より心に刺さると思いますか。

 特に夢を追いかけている人に刺さると思います。遥海さん演じる「女」は、家庭環境などいろいろな問題を抱えています。でも、ちょっと踏み出す勇気があれば、世界ってこんなにも変わるんだ、ちゃんと見てくれている人っているんだということを、教えてもらえるような作品です。勇気が一つのテーマとしてあると思いました。

――岡崎さんが勇気を出した、覚悟を決めた瞬間は?

 上京を決めたとき勇気を出しました。そして、大学へ進学はせず、進路を決める際に、この仕事をやっていくと決意した時も、勇気と覚悟を持った瞬間でした。

――最初モデルさんとしてこの世界に入られましたが、俳優も目指していたことの一つだったのでしょうか。

 お芝居に関して考えたことはなかったです。というのもお芝居は自分の中でそうそうできるものではないと思っていたからなんです。でも、モデルは勝手に近い距離のものだと思っていました。中学生の頃からファッション誌をよく買って読んでいたので、すごく親近感があったんです。テレビやスクリーンの世界は、どこか現実と切り離されているような感覚があったので、そこに自分が入るとは思ってもみなかったことでした。いまだに自分が役者として活動できていることが不思議な感覚があります。

――俳優として10年やってきて、「もっといろんな経験を積んでいきたい」と過去のインタビューでおっしゃっていました。その中で特にやってみたいものありますか。

 声のお芝居です。アフレコの裏側とか観るのも好きなんです。アニメや吹替の映画を観に行くと改めて声優さんってすごいなと思います。実際に自分が登場するお芝居とは違う難しさがあるので、挑戦してみたいです。

――舞台裏、すごく興味深いですよね。

 アフレコの裏側はすごく好きです。自分が思っている以上に感情を出していかないとダメみたいで、その出し方も俳優とは全然違いました。もう少し優しい感じで、とか、艶っぽく、といった指示が入ると、それに対する表現の仕方がみなさんすごいんです。感情をこうやって声に乗せていくんだと、とても勉強にもなりますし観ていてすごく面白いです。

――声に関連して、歌手活動は考えていますか。

 えーっ! 歌手に関しては想像したことも考えたこともなかったです。

――もし、歌手のオファーがきたら、こういう曲を歌ってみたいとかありますか。

 上手いか下手かは別として、カラオケで歌うのは好きです! 歌手は考えたことがなかったので、すぐにお答えするのは難しいのですが、私はカラオケでバラード系を歌うことが多いので、もしそういったお仕事をいただけたら、ミディアム系のゆったりとした歌がいいかなと思っています。でも、遥海さんのすばらしい歌を目の前で聴いてしまったので、歌手活動はより想像できなくなりましたが、もしそういう場があればチャレンジしたいです。

(おわり)

岡崎紗絵

【作品情報】

映画『はじまりの日』(10月11日公開)

監督・脚本・プロデュース:日比遊一
出演:中村耕一、遥海
高岡早紀、山口智充、岡崎紗絵、羽場裕一、秋野暢子、麿赤兒、竹中直人
プロデューサー:増田悟司、右近和紗、岡村徹也
アソシエイトプロデューサー:フランク・デ・ルーカ 加藤剛嗣
ラインプロデューサー:大藏穣
劇中歌プロデュース:Mayu Wakisaka (ソニー・ミュージックパブリッシング)
撮影:山崎 裕 照明:尾下栄治
録音:森 英司
サウンドデザイン:石井和之
整音・ミキサー:小林 喬
美術:高山 仁
スタイリスト: 渡辺彩乃
ダンサー衣裳デザイナー:ニムラチハル
ヘアメイク:遠藤一明
編集:堀善介 陳詩婷
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
製作プロダクション:ジジックス・スタジオ 2024/日本/カラー/107分/PG12

この記事の写真
村上順一

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事